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人生最悪の日

「夢々、美優、今の話は本当なのか?」


 今まで自分だけ知らなかった事実にも驚きだが、まさかそんな事を隠して俺に近づいて来ていたとは。腹立たしい。

 本人達にそう確認してみたが、返事を聞くまでもなく二人の表情で真実ということがわかる。


「あ、あの!今まで黙ってたのは本当にごめんね、咲夜!でも、別に隠してた訳じゃなくて…!それに、私…咲夜に彼女たくさんいて、軍分けしてたのも知ってて…それにもうすぐ私の事、一軍の彼女にしようとしてくれてたのも知ってたから…だからその時に仕事の事も言おうって思ってて…!」


「は?俺が軍分けしてたのを知っていただって?はは、分かってて知らないフリして自分は二軍、更には一軍の彼女になろうとしてたって事かい?どうやって知ったのかは知らないけど、そこまでくると逆に怖いよ。まるでストーカーだな」


「そ、そんなんじゃ…、!」


「それに隠してた訳じゃないって?いやいや、隠していただろう。時期を見計らって自分の都合が良いタイミングで言おうとしていたんだろう?ずる賢いにも程があるね。それになんだ?同じ中学だった?元々俺を知っていた癖に、知らないふりをして声をかけてきたのか?はは、もしかして俺とスキャンダルでも起こしてあわよくば売名でもしようとか思っていたんじゃないかい?まさかマスコミの美優を三軍に送り込んだのも夢々の仕業か?」


 自分だけ知らなかったなんて、馬鹿にされた気分だ。心底気分が悪い。それに美優がマスコミだったとは大失敗だ。最近色々と俺にしつこく聞いてきていたのはそういう事だったのか。

 面倒な事になる前に何とかしないと。


「ち、違うよ!仕事の事を黙ってたのは、そう思われたら嫌だったから…咲夜にそう思われないくらい好きになって貰えたら言おうと思ってたの…!それに美優が咲夜の彼女の一人だったって言うのは今日さっき知ったばっかりだよ!私がそんな事する訳ないじゃん!」


 夢々の必死な訴えに、林と中村が目を合わせる。


「あ、…すんません、もしかして俺達、なんか余計な事言っちゃったんじゃ…?」


「いいえ、良いのよ。私がこうなるように仕組んだんだからね。まあ最も、heaven's kissのお二人がここに来たのは正直想定外だったけど…逆に話が進みやすくて助かるわ」


 状況を見て青ざめている林と中村に、美優がため息混じりに言いながら俺を見た。


「美優が仕組んだ?まあ、そうだろうね。夢々が来た時からずっとおかしいと思っていたよ」


「ええ、そうね。悪いけど咲夜のスマホから勝手に夢々にメッセージを送らせてもらったの。もちろん履歴は消してあるから知らなかったでしょうけど」


 疲れたように、長い髪をかき分ける美優は切れ長の鋭い目付きで俺を見ている。


「中学の後輩って事を黙ってたのは悪るかったわ。初対面の振りをして取りいったのもね。でもそもそも咲夜だって私たちの事を覚えていなかった訳でしょう?お互い様なんじゃないかしら。まあ年齢は特に聞かれた事もなかったし、特別興味も無さそうだったから言わなかったってのもあるけど。それに仕事の事だって、今まで特に気にしてこなかったじゃない。お金さえ持ってこれば三軍の私達彼女はなんの仕事していても関係ないんでしょう?」


 捲し立てるようにそう話す美優はまだ続ける気なのか、今度は部屋の隅で黙っている遥を指さす。


「知ってる?そこにいるあの子、遥は毎月とんでもない額を貴方に貢いでいるけど、それと同時にとんでもない額の借金を負っているのよ。毎日闇金の返済に追われながら、ボロボロの六畳一間も無い部屋に住んでるの。まあそこまで咲夜に貢いでしまう遥にも問題はあるかもしれないけど…それをさせる為に逃がすまいと甘い餌を振り撒いていたのは貴方なの。自分のファンだって事をいい事にどんな手を使ってでもお金を持ってこさせてるなんて、世間に知れたらどうなるかしらね?咲夜」


 自信満々でそう言い放つ美優は「何か言いたい事は?」と言わんばかりの表情だ。鬱陶しいったら無いな。


「はは、そんな事をしたら俺だけじゃなく、heaven's kiss自体が大変なスキャンダルに巻き込まれちゃうけど…そこは考えてないのかい?いいのか?自分の友達を守る為だかなんだか知らないけど、所詮はただのスキャンダル欲しさに潜入したマスコミだって事だよね。しかも大金まで俺にはたいちゃってね。はは!大した正義感だよ。それに夢々が君にそれを頼んだのか?見た所、夢々は俺と別れたくなさそうだったのに、可哀想になあ」


「そうね、heaven's kissのお二人には正直巻き込む形になって申し訳ないとは思う。けど、このまま放置して良い問題でもないの。貴方自分がどれ程クズか理解出来てないの?ああ…それとね、貴方に貢いだ大金だけど、この大スキャンダルが取れたら全部経費で落ちるから安心して。私は何の損もしてないわよ」


 くそ、どこまでも憎たらしい女だ。

 この女を三軍に入れたのは俺のチート人生最大の失敗だ。


「いや、美優ちゃん。俺たちの事は気にしなくていいよ、こんな酔っ払った状態で悪かったよ。咲夜のやっている事がここまでだったとは…気がつけなかった俺たちの責任でもある。記事は出して貰って構わないよ」


「っな!奏、お前何言って…ちょっと酔すぎなんじゃないか?」


「いいや、流石に酔いも醒めたよ。ずっと思ってたんだ、このままずっと咲夜の我儘に付き合ってていいのかってね」


「は、はあ!?俺はお前らのお遊びバンドにここまで付き合ってやってきたってのに、恩を仇で返すつもりか?」


 俺の我儘だと?何を言い出すんだ奏のやつ。


「お遊びバンド、ね。咲夜にはそう見えていたのかも知れないけど、ボイトレもろくにしない奴に言われるのは心外だよ。まあ、とにかく美優ちゃんがこの事を記事にするのは別に止めない。ただし、明日からの仕事は普通にやらせてもらうよ。スキャンダルが報道されたら、それはそれできちんと対応はするからさ、な、純樹もそれで良いだろう?」


 ずっと何か言いたげに拳を握って眉に皺を寄せていた純樹が「ああ、もちろんだ」と強めに一言だけそう言った。


 ハァ、なんて馬鹿な奴らなんだ。ここまで馬鹿だとは。

 お前らには数え切れない程の恩が俺にあるだろうが。

 こういう時こそお前らの出番だって言うのに、良介も黙ったまま、林と中村に至っては修羅場に困惑してただただオロオロしている。

 事務所に電話の1本でもして来いよ、役立たずが!


 heaven's kiss大好き馬鹿の良介ならバンドの為にそろそろ動くかと思って目配せをしたが「咲夜さん、これは流石の俺でもどうにも…」なんて声に出していいやがる。

 馬鹿か、声に出して断る奴があるか!こっそりとマネージャーに電話1本で済む話だろう!


 本当になんなんだ今日は、人生最悪の日だ。


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