理不尽なゲーム
人生っていうのは実に理不尽なゲームだ。
人生皆平等?
ハッ、笑っちゃうね。
現に俺は生まれてこの方、【平等】なんて一度だって感じた事が無い。
ああ、もちろん良い意味でね。
「咲夜さん、見てください…また来てますよ」
「ん?ああ、またコレか」
クルリとノートパソコンをこちらへ向けて、最近俺宛に何度も送られてくるメールを見せられた。
「いるんだよなぁ、こういう[ちょっと遊んでやった]のに勘違いして被害者ぶるやつ」
「んー…という事はお心当たりが?」
「心当たり?うーん、まあどの子かは分からないけど、最近送られてくるようになったんなら…何人かはサヨナラした子はいたかな」
俺にとっちゃ、こんなものは大した問題じゃない。
というか、俺からしてみれば何事も大した事ではない。
だって、人生は平等じゃないんだから。
周りの人間はもちろんの事、天や神までもが常に俺の味方。
「そ、そうですか……あの、これ大丈夫なんでしょうか?『あの時の事忘れてないよね?』『復讐するまで、せいぜい楽しんで生きてね!』『復讐完了までのカウントダウンが始まるよ』って、流石に怖くないですか…?」
「んー、いいのいいの放っておいて。昔からよく来るんだよね、そういうの。まあ、前は来ないように一通ずつ拒否設定してたみたいだけど…海外経由したフリーメールアドレスだし、どこの誰かは特定不可能らしくてさ。それにそれ系のメールで俺に何か実害あった事ないし。あれかな、何かしようにも俺の顔見たら皆復讐心なんて消し飛んじゃう的な?ハハ!」
「そういうモンなんですか、ね…」
そーそー、そういうモンなんだよ。
まあ昔は修羅場とか少し面倒くさい事になった時も無くはないけど、事務所に入ってからはそういう事もめっきり無くなったしね。
「おい!咲夜…!」
「ああ、社長。お疲れ様です。どうかしましたか?」
「社長!お疲れ様です!」
「どうかしたかじゃないだろう!また問題を起こして…!」
「ああ、それだったら今マネージャーと話していた所ですよ。どうせ最近サヨナラした野良猫ですよ。またいつもみたいにメールを送り付けてくるだけだ、放っておけばいい。まあ、本人が暴れるようなら…いつも通り頼みますよ、社長」
「あのな…お前、…」
「ああ、良いんですよ別に。俺、無理強いとかは嫌いですから。ただ…俺を欲しがる事務所は他にいくらでもありますからね。俺がいる事によって生まれる利益と対応にかかる費用…どっちが大きいかなって」
「…っ、……ハァ、…わかった。おい、君!新しいマネージャーだな、前の奴は半年でやめた根性無しだったが…咲夜の管理、しっかり頼むからな!このメールも前の奴がしっかり対処していれば来なかったハズなのに…ハァ、」
「あー、あの人…あまりにも気が弱いもんだから、サヨナラした野良猫ちゃんに言い負けてましたからねぇ。はは」
「全く……とにかく!君もこの状況を見て察してくれ。その野良猫とやらの対処法は私からも伝える。金は惜しまなくていい、とにかくこういう事が起きないように先回りするのも君の仕事だ。」
「えっ、…あ!は、はい!」
ほら、人生は常に不平等だ。
他のやつなら許されないような事が、俺だけは許されてしまう。
人生のバイオリズムってやつがあるならば、俺のバイオリズムは常に頂点で真っ直ぐ一直線だ。波なんて一切おきない。
そう、そうだったはずなんだ。
あんな事さえ起きなければ…あんな事さえ!
俺の人生のバイオリズムが波打つなんて。
いや、波打つなんて生易しいもんじゃない。
理不尽な急降下だ。
きっと死神や貧乏神のような奴らが俺の輝かしい人生に嫉妬して酷い仕打ちをしてきたに違いない。
そう、それ以外にありえないんだ。
今まで散々俺に味方してきた神共は一体なにをしているんだ!?本当にありえない。役立たずのアホが!
この俺がこんな事になるなんて。
人生というのはなんて理不尽なゲームなんだ。
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