目を開けば驚きの連続
お読み頂き有難う御座います。
漸く出会ってしまいましたね。
「思った通り、今の君も可愛いー。俺の小毒蜂」
「ど……あ……ひえ……」
そのネーミングセンス、やはりお前かーい!仮にも好きな女を毒蜂呼ばわりすんなー!!と叫びたいけど、叫べない!駄目だわ。
後、海水が目に染みて普通に痛いし、耳も何だかモワンモワン鳴ってる……。
山育ちなのよ!海とか多分初めてなの!
目がショボショボし過ぎなお陰で……目の前の人物が、どんな見た目なのか特定出来ない!!
「じゃあお頭!ボクは周りの見回りに戻るね!」
「ご苦労。
浮かんでた木片で、遊んできていいよー」
さっきの魔物っ子の声が……モワンモワンしながらも聞こえるわ。木片でもって……そんなに浮いてたの?
あ、当たらなくてよかった。大怪我しちゃう!!
恐ろしい。歯の根が合わないわ。さ、寒気が。
「さ、寒い……」
「あー、冷えちゃった?夏でもこの辺の海域は冷たいかなー?」
この辺に住んでないし、海域がどうとか知らない……。
でも何だか、高そうな肌触りのボサッとした塊で包まれてしまったわ……。
毛深くて温かい布切れなのね……。
ああ、意識が朦朧とするのに足元はしっかりしている……。
意識を失いたい……。いや、色々と失ってるけど寝ちゃ駄目よ……。命まで失いかねない……。
「君にまた巡り会えて、本当に嬉しいよー」
「はは……あ、有難う……ござま……す。そんなに喜んで貰えるような御身分では……」
そもそも誰だ。名を名乗れ……と。
前世だと気軽に言えたのかしら。
貴方は誰。
私を恨んでるひとなの?
でも、この優しげな喋り方の感じだと……ストレートにお前を恨んでるよ死ね!グサッ!とか言わないやらないタイプそうー!!
偏見だけどね!
偉そうとか粗野な脳筋は居るけど、優しげな脳筋タイプって早々居ないじゃない?腹黒そうじゃない?多分だけど!
「海水で目が痛くて見えてない?薬液で目を洗おうか。体も拭かなきゃねー」
「お、お気遣いなく……」
「駄目だよー。潮まみれだろー?」
あ、足が浮く……。足が……何故!?
「耳に水入ってない?」
「えっ、ぶっ、ぎゃあああ!!」
よ、横に……横にというか、縦?
多分横抱きにされて、縦にシェイクされた!しかも向きを変えてまた振られた!!
「いやえあああ!!」
「あ、出てきた」
「や、やめ……」
何処に……何処に!何処の世界に!!
仮にも……仮にも前世から追いかけた女の耳に入った水を振って抜く男が居るのよ!?
やるにしても、横抱えにして、上下にシェイクする必要ある!?
勢いで鼻水出なくてよかっ……いや、濡れてるから見目には判らないけど今出てるわね!!感覚で分かる!!嫌だあああ!!こんな初対面イケメンの前で鼻水垂らすとか、流石に女の、というか人としての矜持やプライドズタボロよ!!
「水飲んでない?」
「飲んでるかも……いえ、飲んでない!!いいから!!そういう仕度はひとりで!孤独に!!処理させて!!
私にだってプライドが有るのよ!!」
「あ、やっとちゃんと喋ってくれたー。可愛いねー」
話通じない。
何てこった。
実は間抜けを晒させて、プライドズタズタにしたのをご覧になりたいタイプなの!?
何てこと!大成功よ!!ダメージ過多よ!!
「俺旦那様だし、君のお世話焼くよー?」
旦那様は、お世話する職業じゃないんでは。うう、この体の向きでは、力が入らす拭かれるがままに……。
ちょ、首から下は拭かなくていい!!
「お世話はご遠慮申し上げますし、本当に要らないんですけど!?」
この男、春の青空みたいなタレ目は優しげな癖に、滅茶苦茶無茶言うな!?
滅茶苦茶見ないタイプの……この世で見た中でかなりの上位イケメンなのに!!
近所のガキ共と変わらないレベルで扱い難い!!
「……ん?」
はた、と気付いた。
ドーン、ドカーン!!
耳から水が抜けたお陰でよく聞こえるわ。
「やっと俺を見てくれたねー」
「瓦礫がーーー!!」
顔とかよりも!!
瓦礫が!!後ろを!!爆音と共に飛んでいったんだけど!!
「あー、小煩いよねー。遊ばせる数足りなかったかなー」
「なななな……」
「全く、油断させて追い詰めたつもりかなー?おーもしろい人達だよねー。君が生まれた国なのに」
「え、ええと、その……」
「可哀想に、怖いよねー?」
怖いに決まってるじゃないですか。
「住んでた国に牙を剥かれるなんて最悪だよねー?仕返しは任せといてー?」
人懐っこく見えるけど、凶悪な八重歯を光らせる貴方が滅茶苦茶怖いわ!!
見た目は、怨霊ぽくないのに!!人外オーラが滅茶苦茶する!!人外に会ったこと無い……いや、さっきの子魔物か!?あの子ぶりだけど!!
実際に海水の中で目を開けて、尚且つ泳げる方、尊敬します。