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時間は安々と超えるもんじゃないよね?

お読み頂き有難う御座います。

伝聞ですが、前世からミュリエッタをお探し中の怨霊王子から、ちょっぴり過激トークが飛び出します。

苦手な方は、お気をつけの程を。

「お頭はスゲーよ?時間を越えて愛の力でお妃様を探しだしたから!」


 何なのその人外行為。

 時間は超えてくれるな。恐ろしいわ、そのストーカー気質。


 何でもそのストーカー気質王子……いえ、怨霊王子はあ船の上に居て、私の住む村のある国にあっという間に攻め入り、壊滅の危機に陥れたそうなの。


 我が国では良い立場に居ない、沢山の……滅茶苦茶沢山の恐ろしい外見の人達を引き連れて。

 海から、陸に。

 ……何で……。滅茶苦茶強い騎士様とかこの時代には居ないの?


「黄金にきらりと光る蜂蜜色。その美しい左の瞳を持つ、愛らしいひとを出してくれる?

 絶対此処に居るから。知ってるから。

 ねー、早く?」


 攻め込んだ王様のお城。そこに座る王様を引きずり降ろして、それはそれは優しい美しい麗しい微笑みを浮かべて。微笑んだんですって。


「早鐘を打つこの胸の鼓動が苦しいんだ、早急にね」


 そう、国王陛下に申し入れたそう。

 今聞いただけで、私の鼓動の方が苦しいわ。


 でも片手でそれ持てんの、ヤバくない?と評価された大きな大きな銃を、尊き方の血の気の失せた鼻に押し当てて脅したらしいし。


「今も昔も可愛らしい彼女を連れてきてくれないと、目玉から顎にかけて、空気穴が増えるなー?

 息が沢山しやすくていいねー?涼しいかなー?

 あ、そこのみいんな、お揃いがいいよねー?」


 早く連れてこい。さもなくばお前らは軒並み顔面を失えと、そう宣う姿はニッコニコと爽やかな笑顔だったそう。

 新聞には、現場を見てきたかのように書いてあったわ。

 止めて、そんなのガセだと言って。創作でしょ!?怖すぎるから!お陰で御触書の内容も怖かったわ!!


 大体……今の私と前世の私の容姿は、似ても似つかないのに!


 有り体に言えば派手と地味。しなやかな豊満と柔らかくない貧相。

 人に見られたいタイプと、人の目から逃れたいタイプ。

 念入りに手入れされた金属光沢に近い金髪と、日差しと日々の生活で傷んだ枯れ草色の髪。

 前世と違う体の特徴を上げれば、限りなく両極端。似通った所なんて殆んど無し。目の色以外は。

 ただ、不自然なまでの蜂蜜色の左目以外は……違うのに。


 左目……!!何でなの。何で残ってしまったの。

 前世なんてれっきとした血の繋がりのない他人なのに!今の造形は、せめて全く違うお色味でお願いしたかったわ。親は普通の……右目と同じ白灰の目なのに。


 怨霊王子とやらは、何で今の私の姿を知ってるの。中身も違う筈なのに。

 未知の察知能力なの?そんな能力。人智を超えてるのって普通に怖すぎるからやめてよおおお。


 怖かったのよ。

 勿論御触書の内容に怯えた私は、全力で逃げようと試みたわ。

 村の皆も7割くらい同情してくれて、失踪を手助けしてくれようかと言うその時。


 ……片目を隠すにも限度が有ったからか、誰かからのタレコミか。

 私が失踪を決行しようとした16の誕生日翌々日、凶日にね。

 私を保護と言う名の生贄をとっ捕まえに来る迄、時間は本当に掛からなかった。


 何でこんなに早かったかと言うと……。

 あのゴールデンな割には黒雲を背負う不吉な船が、全ての港を席巻して……封鎖しちゃったんですって。

 そしてまたお城に乗り込んだそうよ。


「ねーまだー?

 胸が張り裂けそうで苦しいから、早くして」


 お急ぎしてね、と。

 そんな追加科白を使者に読まされて、私の胸が張り裂けて米神から血を噴いて倒れそうだったわ。

 丈夫な体に何の軋みも無かったけどね!!


 ふざけんな、いえ何でもありません。前世の私のせいですよね。

 正直タカを括ってたの。こんなド田舎には早々に来ないよって。


 でも、王宮の皆様、一丸となって必死に探したんですって。

 住人情報は近くの町役場で管理だけど、村長とかその家族は王都の基本台帳にプロフィールが?へー。

 名前に生まれ年は勿論髪の色や目の色迄!


 ……酷い!!

 村長の娘だから、詳細な特徴が台帳に載ってたって。だから見付易かったと……。

 そんなスピーディーな仕事ぶり、有る?

 近隣の村を統括してる隣町役場だって、ウチの村の台帳出してくるのに一週間は掛かるのに。


 田舎娘ひとりの犠牲で国王が死なず、国が滅びないなら!イエス生け贄!ノーモア滅亡!と偉い人達の満場一致で決まったらしいわ。有能な人達が私を必死に探したんですって。


 酷すぎるわ。


 でも、分からなくもない。他人事なら……恐らく……いえ、止めさせたいと命を賭けて義憤に駆られてはないわね。

 仕方ないなー、とスルーしたでしょう。


 ダメね、中身まで悪女な前世に引っ張られそうだわ。ちゃんと生きようと思っていたのに!!


 そもそも、一体誰が怨霊王子に成り果てたのか、それすらも分からないのに!!どうやってご機嫌を取ればいいの!?


 沢山居るのよ!前世で私に執着して恨んでる、怨霊王子になりそうな候補が!!

 王子って名付けられる位だから、実際の王家の出身じゃなくても高貴な身分の男性なんでしょうけど!!


「お妃様ー、ねーってばあ?」


 この凶悪なトゲが無ければ、濡れて光る黒髪も、真珠の飾りも……王子様のようだわ。

 いや、お姫様?

 ……前世の私ルミエッティが蹴落として恨んでる女性が男装してるかも、しれないなあ……。


 ……どうやって避けるべき相手を察知すればいいの?


「そろそろ行く?行こっかあー!」

「い、行きたくない……生きたい……」

「行きたいんだね!お頭も喜ぶよ!」


 違うのよ。……前には魔物少女?がおり、後ろには毒の植物が満載の藪が生い茂る。


 逃げたいよー!!

前門の魔物っ子。後門の毒植物。

嫌な待ち合わせ場所ですね。

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