逃げ出したから引っ捕えたよ
お読み頂き有難う御座います。
ゼルン視点でラストです。
ルミエッティは過去の女。元々の孤児院で付けられた名前は、エティ。
あいつが持たされたのは金属光沢の髪に、ガラスの目玉。壊れて歪まされた体。そして、ひん曲がってしまった性格。
そんな女が、ちゃんとした生身の女だと思っていたのかな。笑える。
見た目は俺の方が化け物だと思ってただろうな。
でも俺は、俺のまま。何も変わらない。
残念な思考回路だよな。
「アンタの事は好きだけどさー。飽きちゃうんだよねー。次回もご一緒とか家族とか御免だわー」
身分だけ高いスカスカ頭の人形共を集めておままごとをするのも、許してきた。
孤児院には遊び道具なんて、無かったからね。遊びに飢えてたのは知ってる。
老若男女揃えて家族ごっこなんかも、付き合ったことも有るよ。楽しそうだったから。
まあ、ひとつも楽しく無かったけどね。
スカスカ頭共に触れてイイ様にされて喜ぶ様なんて、反吐が出たよ。実際吐いた。
悪意の塊を初めて喰らわされた時よりも、苦しかったな。
子供の頃から愛してたよ。縋られて愛されたから、愛したんだ。
でもそっちは飽きちゃうんだ。
何の言い訳か企みか知らないが、腹が立ったね。
遠ざけようったって、遠ざかろうったって。
あー許せない。赦すものか。
連れ回される間に、世界も色々見たよ。
中には幸せそうな家族もあったし、お人好しも沢山いた。
純朴な娘も見た。
優しい老夫婦も見た。
ああいう性格のいい君なら、良かったのになあ。
孤児の頃の記憶なんてどうだっけ。良い事あったっけ。
腹立つな。この生意気で毒に浸かったルミエッティを造り変えたい。
都合よく動かされたルミエッティを、都合のいい女にしたい。
そうだ、改心させる話もあるよな。
物理的に、心を入れ替えさせよう。
別人に生まれ変わらせれば、心置きなく愛せる。
もう心変わりに怯えたくない。
「止めてよ、ゼルン……。アンタとは、もうヤなのよ……。絶対、逃げてやる!!」
俺に喰われたヤツは、怨霊となる。
でも、俺の言う事を何も考えずに聞く訳では無いし、強い奴も弱い奴も居る。
だが、俺より決して強くはなれない。
死者には成長が無いからな。
死者には悪女の魅力なんて効きやしない。簡単に捕まったルミエッティは、あっという間に虫の息。
腹立つな。何勝手にサラッと死んでるんだよ。
まあいいか。タグを付けておこう。
そうだな。
その、手を加えられた中でも最もマシな、蜂蜜色の瞳に。
いい感じに生まれ変わっておいで。優しく他人の事を思い遣る、心の美しさを持って。
そうしたら、一緒に暮らそう。
長く心地好く生きられるように、こっちも色々整えておくよ。
「何も前の事を覚えていなくていいよー、幸せになろうねー」
「でも」
「今の君が好きだよー、ミュリエッター」
この地では、元々生きる者と死者は拮抗していた。
昨日招待したティボー村の人達も、ミュリエッタが連れ去られてから直ぐに、国の騎士達に殺されていた。
その国も、もう直ぐに無くなる。
いや、派遣した怨霊と入れ替わる。
怨霊と交わった生者の実験も、その子供の発生も成功してる。
「ねえ、ゼルン……こんな衣装、贅沢じゃないかなぁ……」
「もっとキラキラさせようー!可愛い君に相応しくね!」
今の君を心から愛せるよ。
「でも、前に無駄遣いを」
「何も覚えていなくていいからねー」
思い出したら、また待たなきゃならないしね。
沢山の素敵な小説の中から、お読み頂き有難う御座いました!




