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私のノート

作者: 夏楽ニャン子

私のノートには、私の願いが沢山書かれている。


あのノートはとってもいいものだった。



***




「え~っと、次の問題は…。」

私はいつものように家で宿題をしていた。一人勉強の課題は算数。自分で問題を考えるのは面倒なのでドリルの問題を写して書くだけ。


「あ~疲れた。…ってヤバい!そろそろ好きなテレビ番組始まる!」


でも、問題はまだあるしノートも埋まっていない。しかしこのままでは番組を見逃してしまう。

「もう!どうしてこうなるの!」

私はもう何もする気が起きなくなりページの端に『宿題を終わらせて下さい』と誰にも向けてないメッセージを何の気なしに書きノートを閉じ、電気スタンドの明かりを消し

「もういっか!テレビ見ようっと。」

と諦めモードに切り換えて部屋を出た。




…暫くして部屋に戻った私は電気スタンドをつけ机の上を見た。はじめは…あぁノート置き忘れたのかぁ。と思っていたがテレビを見る前の事を思いだしパニックになった。

このままではお母さんに叱られてしまう!


「テレビ一週間見ちゃ駄目だからね!…なんて言われたら…どうしよう。」

慌ててノートを開くと…

「え!!なんでッツ!!」


そこには、課題・図形・問題の他にまとめとしっかりとしたふりかえりが書かれてあった。

今までテレビを見ていたのだから自分では書いていないはず。

「誰?誰がやってくれたの?」


…その時、端に書いた願い事が目に入った。その隣には小さな文字で何かが書いてある。よく見てみると『かなえたよ』と書かれていた。


お父さんは会社、お母さんは一緒にテレビを見ていたしお姉ちゃんは部活で夕方6時にならないと帰ってこない。今は4時50分…早く帰ってくるとは言ってなかったし何より靴もない。

一体誰が?と思ったけれどもしかして…と私はふと考えた。


「もしかしてこれは○○を叶えて下さい。って書くと叶えてくれる魔法のノートなのかも!」


…よくよく見返してみると書かれてあった文字は私と正反対の小さい字だった。

「まぁ、そんな事どうでもいいや!よしっ!じゃんじゃん願いを叶えよ♪」



***


それからというもの私はどんどん自分の願いを叶えていった。宿題は勿論、欲しかった服・漫画・お菓子・新しいとっても可愛いぬいぐるみ!お母さんはどこで貰ったのかしつこく聞いてきたから煩くてついに頭にきて

『もう私の部屋に来ないでよ!』って書いたからもう安心。

「さぁて次はどんな願いを叶えて貰おうかなぁ~♪」

書き続けて3ヶ月。私は今日も願いを叶えて貰おうとノートに目をむけページを捲った。


もう家族とも会話していない。


友達も次第に離れていった。



でも、この時の私はそんな事気にもとめていなかった。


「ん~っと、じゃ新しいスカートがほし…」


ガシッ!!


ふいに私の肩に誰かの手がかかった。

ノートに書いたから部屋には誰も入ってこない筈だし私の後ろには大きな姿鏡しかないのに…?

一気に全身に寒気が走ったその時手の主であろうモノから声がした…。



「ねぇ、もう貴方の願いを叶えるのは沢山なの。そろそろ潮時…交代…しましょ?」


振り向くと鏡の中からワタシがゆっくりと出てきていた。


「貴方は家族とも口をきかなくなって勉強もしないし、友達との付き合いも悪くて他人と話す事といったら自慢ばかり…」


私は背中に玉のような汗が流れ落ちるのを感じた。


「この鏡の世界の中のワタシと貴方が入れ替わったら、家族や友達共上手くやっていける。…きっとその方がみんなも嬉しい筈よ。」


ガクガクと震える私にもう一人のワタシはお構いなしに笑顔で言葉を続けた。


「このノートを使っている間のみんなの記憶は消しておくわ。安心して」

するとグイと掴んでいた肩を引かれ私は鏡へと押しやられた。


「いやッッ!やめてぇぇえ!!」




……



…いつも私は鏡の中から思う。



あのノートはとっても『いいモノだった』って…


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