12 聖剣視点
やっと、やっと聖剣らしいことが出来た、私!!
私は感動した。
なぜなら、変態の玩具になりかけたり色々あったのだ。
でも、今回!!
私は約1000年ぶりに、聖剣らしくモンスターを倒すことが出来た!
というのも、今の持ち主の実力をはかろう、ということになったのだ。
今の持ち主は、魔族領で数ヵ月後に行われるという【ステゴロ大会】にゲスト参加することが決定していた。
そのため、魔族相手に戦闘訓練というか特訓を行ってきたのだ。
そして、とりあえず一旦実力を見て見ようということになり、とあるダンジョンを指定された。
そのダンジョンの攻略することになったのである。
この場合の攻略とは、ダンジョンの最下層まで行くこと、らしい。
なんでもそこには、初代魔王が所有していたとされる魔剣が突き刺さったまま放置されているらしい。
その魔剣なら知っている。
1000年前、私はその魔剣と殺し合ったのだから、知らないわけがなかった。
『抜けたら君のものにしていいからね』
現代の魔王はそんなことを言っていた。
今の持ち主は、双剣使いも悪くないかな、みたいな反応だった。
しかし、そうそう簡単に魔剣に選ばれるとも思えない。
持ち主と現代の魔王の会話を聞く限り、初代魔王以外には抜くことが出来なかったらしい。
つまり、魔剣の方も私と同じで持ち主を選んでいるのだろう。
もしくは、魔剣は前の持ち主である、私が滅多刺しにしてぶっ殺した初代魔王にゾッコンだったから、他の者を主として認められないのかもしれない。
1000年前のことを思い出していると、モンスターを倒すことに一役買ってくれた魔族の少女が、今の持ち主に頭を下げてお礼を言っていた。
なんでも急に一緒にダンジョン攻略をしてくれ、と紹介された子だった。
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
そう言いつつ、頭をペコペコさせ、嬉し涙を流している。
「いいから、いいから。
次もいまの調子でお願いね」
「はい!!」
「あと、動いててやりにくいなって感じるところとかあったりした?」
「あ、その、実は――」
ふむ。
魔族との戦闘訓練だとわからなかったけれど、今の持ち主って人をフォローすることに慣れてる感じがするのよねぇ。
それに、なんて言うんだろ??
前の持ち主だったら、今みたいに羨望の眼差しを向けられたあとは、その女の子といい感じになることが多かったのに。
なんて言うんだっけ、こういうの??
あ、そうだ!
【英雄色を好む】よ!
でも、今の持ち主はそれが無いのよねぇ。
それとも、もしかしたらダンジョン攻略が終わったあとに宿に連れ込むのかしら??
前の持ち主の時もあったけど、若ければ若いほど激しいのよねぇ。
でも、その気があるにしては、女の子に対してボディタッチもしないのよねぇ。
男の子なのに、変ね。
女の子の目は覗き込んで、魔眼だと看破してたけれど。
ボディタッチは何もしないのに、女の子に対してはとても親身になって色々提案してるのよねぇ。
んー、まだ恋を自覚してない、とか??
いやいや、それは無いか。
「……フォローが上手いね。教師の経験でもあるのかな??」
そういえば、もう一人いたのを忘れてたわ。
今しがた、持ち主に声をかけたのは女の子を連れてきた魔族の青年。
四天王の一人らしい。
以前の特訓で、私をナニに使おうとした変態マッチョや、虐めるのが好きなサキュバスの同僚だ。
ちなみに、その2人と比べると、まともな人種である。
「あー、教師っていうか。
人間領だと新人冒険者の教育係任せられることが多くて」
今の持ち主が、頬を指で掻きながらそんな説明をした。
なるほど。
教えることに対して、経験済みだったのね。
だから慣れてるのか。
前の持ち主は、そういうの出来なかったから、ちょっと新鮮ね。
もう、モンスターを倒す、魔族を倒す、村や街を救う。
これの繰り返しだったから。
「まぁ、その条件で雇われてたはずのパーティから解雇されちゃったんですけど」
女の子には聞こえないように、持ち主はそんなことをボソリと呟いた。
その呟きが、青年にはちゃんと聞こえていたようで、
「いや、お陰で助かった。
というか、訓練必要なかったかもなぁ。
そういうことなら、手出し無用でいいかな??」
「えぇ、大丈夫です。
ガチでやばい時だけ、助けを求めますよ」
そんなやり取りが、持ち主と青年の間で交わされた。
そして、そんな持ち主に女の子はキラキラとした視線を向けていた。
ニマニマが止まらないわぁ。
こんな近くで、淡い恋愛模様を観察できるなんてね。
楽しみが増えた♪