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 さて、世に多く知られている構成方法といえば三幕構成、と起承転結かな?

 序破急とか、ヒーローズジャーニーなんてのもあるよね。

 まず最初に、こういった構成方法がどうやって作られたのかをお話するね。


 さて、ここで君たちに質問だ。

 「作品が先か構成法が先か」

 この世に先に存在したのはどちらだと思う?


 応えは当然、「作品が先」だよね。

 この世に数多ある構成法っていうのは、数多ある作品を分解して研究して作られたものなんだ。


 特にヒーローズジャーニーやウラジミールプロップなんかはそもそもが『類型』を分析するための学問を流用したものだからわかりやすいかもしれないね。


 起承転結や序破急も同じ、まずは物語があって、その機能を分析した結果に名前を付けたものなのさ。

 だから恐ろしいことに、よくできた構成法であるほどこの世のすべての物語をその構成法に当てはめて分解することが可能なんだよ。


 例えば君が自分の心の中にしかない物語を起承転結に書き起こそうとしたとしようか。

 物語が完全に破たんしていない限りは可能だ。

 なぜなら起承転結というのは「何かの物事が起きて、それを承けて事態がすすみ、解決の方向に向けて転じ、結論がつく」という、ごく当たり前の流れに名前を付けたものだからね。

 誰の物語だって「主人公が動き出し、何やかんや冒険を重ねて、最後の選択を経て、エンディングにたどり着く」ものだろう?


 つまり構成方法というのは物語を分解する機能から始まった。

 これが今回のポイント、忘れないようにね。


 だから構成法を本気で勉強したいなら、まずは既存の作品を分解するところから練習するといいんだよ。

 実際にきちんと構成法を勉強している人は、この分解という練習をきちんとしているよ。

 ところが構成法の本とかを読んだだけの人は、そこに書いてある用語や手順を覚えようとするばかりで、しかも覚えた知識だけを使っていきなり構築を始めようとする、だから失敗することが多いんだ。


 さて、僕が実際にお勧めする構成法は『三幕構成』だよ。

 これは何かというと、膨大な数の映画を『分解』して導き出されたストーリーのテンプレートだよ。

 映画用のテンプレートが小説に対して効果的かどうかっていうのは、たぶん誰でもが一度は抱く疑問だと思うんだ。

 なぜならこの三幕構成というのは『観客が画面に集中していられる時間』を基礎としているから、映像ではなく文字で出力される小説とは『テンポ』が重ならない部分もあるからね。

 でも、それは出力形式の問題であって、ストーリーの基礎を構築する根幹の部分は映像も文字も大して変わりはないんだよ。


 何より素晴らしいのは、三幕構成は起承転結で承にあたる部分――つまり物語の山や谷が一番多くなる部分を事前に構築できるように作られているということだね。

 三幕構成では『二幕』と呼ばれている部分だよ。


 ここがしっかり作れるということは、起承転結では「桃から生まれた桃太郎→鬼退治に出かけて→鬼を見事退治して→めでたしめでたし」となる話を「鬼退治の旅に出た桃太郎→あまたの困難を見事乗り越えて鬼ヶ島に乗り込み→鬼を退治して→めでたしめでたし」というように、見せ場をしっかりと盛り込めるんだ。


 それに二時間映画を基準として作られた三幕構成は、これで小説を構築するとちょうど公募向きの十数万文字(文体により誤差アリ)になるよ。

 だから、まずは三幕構成でプロットを組むことを一度お勧めするんだよ。


 この時に忘れてはいけないのが今回のポイント、「構成方法は物語を

 分解する機能から始まった」だよ。

 その気になれば、どんな物語だって三幕構成に分解することができるんだ。

 つまり『アップルパイ』のイメージを無理やり『レシピ』に書き込むことができるってこと。


 例えば君の中にあるイメージを三幕構成という『レシピブック』に書き込んだとしよう。

 実に簡単なことだよ、それっぽいポイントを見つけて物語を分解すればいいだけだもの。

 実は起承転結で作れば、ほとんど、どの物語でも分解できる。

 でもそれは『砂糖を○グラム』と書くべきところを『砂糖っぽいものを甘くなる程度に』って書いたのと同じなんだ。


 はじめのうち、プロットを組めと言われると、この『自分の物語を分解する行為』に夢中になってしまうことだろう。

 だから苦しくなるし、プロットに大穴が空く。

 しかも悪いことに、プロット作業には時間的努力を対価とする行為を伴うから、出来上がったプロットにダメを出されても『自分の物語』に問題があるとは認められない。

 結果、『プロットなんかいらない』とか、『プロットは我流で十分』とか、まあいいかえれば「そんなもの無くても私はできる!」と言い出す人も少なくない。


 なぜそんなことになるのか、この理由は簡単。

 構成法が『分解法』であるということにあまえて、ただ分解することをプロット作業だと思ってしまうからさ。

 プロット作業において自分の物語の『分解』は、これから長い時間をかける物語の構築という大事業のほんの入り口に過ぎない。


 さて、『アップルパイ』のレシピの話にもどろう。

 お菓子作りには材料だけではなく手順も大事だ。

 例えばパイ生地なんかは、ただ粉をこねただけではあの多層感は出ない。

 生地を伸ばして、折って、また伸ばして、折ってということ何回か繰り返す。

 もしもこの手順をとばしたら、いくら材料が正しい文量でもパイは作れないんじゃないかな。


 先人たちが研究し、『アップルパイを作るため』に書いてくれたレシピには、この手順もちゃんと書いてある。

 三幕構成ではセントラルクエスチョン(主人公が物語中で解決するべき問題)は『インサイドインシティングの事件と対になる』とか、『これによってセットアップは終了』とか、実はきちんと書いてあるんだ。

 これも三幕構成が好んで使われる理由。

 もともとが映画学校のカリキュラムとして使われていたものだから、文献も探しやすい上にきちんと手順が書かれているから勉強しやすいよね。

 だから本当は、この手順通りに作業すれば、三幕構成をきちんと構築することはすごく簡単なんだ。


 先人たちがしたのは物語を分解してそれで終わりではなく、『面白い物語に共通するものは何か』をその分解図から探すことだったわけ。

 だから完成した構成法は手順も含めた『レシピのテンプレート』だと思えばいいかもね。

 それにはきちんと手順も材料も書かれているから、あとはここに任意の情報を入れるだけで『レシピ』は出来上がるって寸法だ。

 ただし、これで完成するのはあくまでも『レシピ』。


 つまり『アップルパイを作ります~、これは焼いたお菓子でサクサクしているので小麦粉が必要なのかな、あとリンゴ?』を無理やりレシピに当てはまるように分解するようなことをするのではなく、あくまでも『レシピ』を書いているんだっていう心構えがないと構成法って使いこなせないんだ。

 なぜならレシピを書くにはレシピのための書式っていうのが必要になるからね。

 『焼いたお菓子で~、サクサクしてて~』ってところを『材料は小麦粉が○グラム、バターが○グラム、水が○グラム、別途打ち粉用の小麦粉少々、最初に小麦粉をふるっておく』って書く必要があるってことさ。


 もちろん小説はお菓子作りとは違うから、必要になるものは小麦粉でもバターでもないけどね、考え方は同じ。

 じゃあ、小説の『レシピ』を書くのに必要な材料は何か、それはまた次回。


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