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 アザとー式 集中講座


 みなさ~ん、プロット、作ってますか~?

 俺はバリバリ、この文章書くためのプロット作ってたよ~


 というと、不思議に思う人もいるかもしれないね。

 だって一般的にはエッセイって「筆のまま想いのままにノンプロットで書くもの」だと思われているから。

 もちろんすべての文章には、そういう書き方『も』許されているよね。


 だけど学生時代の現国の勉強を思い出してみて欲しい。

 そう、テストで『次の文章を読んで以下の問いに答えなさい』ってだされるあれさ。

 あれ、特に問題にするんだから読解しやすい文章が選ばれているよね。

 だから解き方としてはどこからどこまでがどういった意図をもって書かれたのかがわかりやすい。

 つまり文章が『最適化』されているんだ。


 今回、僕がやっていたのも、この『文章の最適化』という作業だよ。

 具体的には『プロット作業とは最適化である』なんて難しい話をどの順番で、何を実例として出したら、わかりやすく伝えることができるのかを、メモ化する作業だよ。


 ここまで何回も出てきたから、もう気が付いた人もいるかな。

 そう、僕がお話しようとしているのは『最適化』についてだよ。


 実は小説のプロットっていうのはこの『最適化』のために作るものなんだ。

 どういうことかというとね、作者の頭の中にあるストーリーは『完成品のイメージ』であり、そのまま書き始めるのは難しいよって話なんだ。


 例えばアップルパイを思い浮かべてごらん。

 『アップルパイ』と聞いてパッと頭に浮かぶのは完成したアップルパイのイメージだろう?

 君は自分の頭の中にあるアップルパイのイメージを言葉で他人に伝えることができるよね。

 皮がどんなに美しい焼き色か、どんなおしゃれな見た目をしているのか、いくらでも説明することはできると思うんだ。

 だけど、それはあくまでも外見のイメージであって、「こういう見た目のアップルパイを作ってほしい」って誰かにお願いしても、自分がイメージした通りのアップルパイが出てくるとは限らないよね。

 だって、それって外側から見た『アップルパイ』を言語化しただけだもの。


 もういっぽ進んで、食べたときの感覚を説明したとしよう。

 「切ると中身がとろ~りってこぼれてきて」「甘さはお店のよりも控えめで」「シナモンの匂いがほんのり香って」……

 この説明が上手なら上手なほど、自分が理想とする『アップルパイ』の情報を全て伝えることができたと自分では思ってしまうだろうね。

 ところが、それだけ説明を重ねたのに出てきたアップルパイを食べて君は思うだろう、「ナンカチガウ」とね。

 もしも思い通りのアップルパイが出てきたとしたらそれは偶然か、アップルパイを作った人が普通よりも聞き上手だったって話さ。

 普通は「ナンカチガウ」が出てくるはずだよね。


 じゃあ君が自分でエプロンをつけて、理想の『アップルパイ』を作ってしまおう。

 完成品のイメージも、味のイメージも君の中にある。

 だけどそれだけでアップルパイが作れるかな?

 完成品のイメージも、味のイメージも、それは君が『食べる側』にいたときの情報であって、『作る側』に回ったときは何の役にも立たないんだ。

 自分でアップルパイを作るにはまず、アップルパイが砂糖と小麦粉とリンゴでできていることを知ることから始まるよね。

 つぎに手順、まずは砂糖でリンゴを煮て中身を作り、パイ皮を練って成形するという順番を知らないと、アップルパイにはならないよね。

 つまり、作り手側に回ったときに必要なのは『レシピ』。


 ところでこのレシピ、婦人誌にのっているようなご家庭向けのものでも、めっちゃ有名な菓子店の秘伝のレシピでも『書式』に大差はない。

 『小麦粉○グラム リンゴ○個 砂糖○グラム』のような数字と、作業手順という『データ』として書きだされているはずだ。

 つまり食べる側だった時は「なんだかこんな感じ」という感覚依存だった情報が数字という形で明確に『情報化』されるわけだね。


 こんな感じで、『完成品のイメージ』を具現化するには『データ化』という作業が必要になるんだ。

 どんな物品でももちろん、外側の見た目や使ってみたときの使用感だけで者を作ることはできないよね。

 設計図だったり、作業工程表だったり、きちんとデータ化された土台がないと『商品』って出来上がらない。


 ところが小説だと自分一人で作業をするから、商品の完成イメージがあれば書き始めることも、曲がりなりにも完成品を作ることもできるよね。

 だけどそれって完成品のイメージだけで『アップルパイ』を作ったのとおんなじことなんだ。

 だから『レシピ』であるプロットを作るという作業ができない、もしくはぜんぜんプロットじゃないものを作って「これが『レシピ』だ!」と自分で思い込んでしまう。


 もちろん、そういう作り方もありだと思うよ。

 要は『完成品』が出来上がるならば、その過程は消費者には無関係だからね。

 だけどプロットの勉強をするためにはこの『完成品のイメージ』と『レシピ』の違いが必要になる。

 この違いをきちんと認識しないから、プロットの勉強をしようという人は挫折しがちなんじゃないかな。


 ここから先で話すことは、この『レシピ』を作るための話。

 完成品のイメージだけで書ける人や、レシピなしで書きたい人は読む必要がないと思うよ。

 だけど、『プロット』を勉強してみようとか、組んでみようと思う人は一度読んでみて欲しい。


 というのも、自分の中ですべてを処理してしまう『物語を作る』という行為の中では、『完成品のイメージ』と『レシピ』の違いは作者にしか判断できないからなんだ。

 作者が強く「このくらい砂糖を入れれば甘くなるはず!」と言い出したら、それがあやふやな『完成品のイメージ』であっても、周りは『レシピ』だと判断するしかないんだよね。

 だから大事なのは自分で自分の中にあるのは『完成品のイメージ』なのか『レシピ』なのかを冷静に判断する能力を養うこと。

 つまり自己改革が必要になるかもしれない。


 そういった能力が自分に備わっているか、それともこれから勉強しなくては獲得できないものなのかの判断材料としても、この講座は役に立つと思うよ

 気になる人は待て、次話!





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