第一七幕 助けてくれたシードラゴン
「……ここ、は」
オービスは目が覚めると岩の上に自分は目が覚めたことに気づく。
起き上がれば、さっきまでいた砂浜だと気づくのと同時に隣に大きなシードラゴンがそこにいる。
綺麗なガラス細工にも似た透明感のある羽。綺麗な青鱗と澄んだ青い瞳した竜は、偉大で、壮大な物語のワンページのような出会いに驚きを隠せない。
『……目覚めましたか、人の子よ』
オービスは肩をビクつかせる。
「喋った!? 竜が!?」
いいや、ファンタジーならよくあることだし、普通、か。いやいやいやいや、それで済ませてどうする!? 今たぶん、すっごく失礼なことを言っちゃったよな!?
『人の子は、知らなくてもおかしくないでしょう……驚かせてごめんなさい。けれど貴方は貴方の巣へお帰りなさい』
「巣? 家のこと……ですか? 俺、ここがどこかもわからなくて。西暦、いいえ、今っていつだったりしますか?」
『ここは珊瑚の大海原……そして、刻時暦1861年です』
「こくじれき!? ……俺が知ってるのは、施告暦ですよ!?」
そういえば、ミラさんから聞いた時は施告暦2027年だったはず。
『知らないですね』
「え、えっと……俺もしかしたら、タイムスリップしてきちゃったのかも、です」
『……嘘偽りは?』
「ないです!! だって嘘でいいなら、手の込み過ぎる嘘でしょう!?」
『……迷い子と言うわけなのですね』
「迷い子?」
『時代を逆行する者、違う世界に迷い込んだ者、ありとあらゆる迷路に迷い込んだ者をそう呼びます』
迷子じゃなくて? 何の違いなんだろう。
『……貴方の名は?』
「オービス、オービス・クロウです」
『黒鴉の魔女の血族の者ですか』
「正確には、弟子です。スラム街の出身なので……」
『……そういうことですか』
竜は顔を上げ、俺に厳かに告げる。
『————私は、ヨゼフィーヌ。海の魔女様の従者でもあるシードラゴンです』