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転生者の御伽噺世界(フェアリーテイル)  作者: 絵之色
第二章 海色の青頁
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第一五幕 魔力を外に出す練習

 ……あれから数日、師匠のおかげで体に魔力を通わせる感覚を掴み始めていた。

 まだまだ微弱だが、体の血管が血とも違う何かが巡る感覚というのは本当なんだなと再認識した。

 体が温かくなる感覚と、視界がわずかにぼやける感覚。その二つをゆっくり体に慣らすこと。

 慣らしているつもりだけど、ちょっとずつ目がぼやける感覚がどうしても気持ちが悪い。


「……ふぅ」


 中庭で練習するのは、外の外気に触れる方がより魔力を感知しやすいと師匠に勧められて行っている。彼女が訓練に関しては嘘はついていないのは自分が魔力を体が認知できたのだから間違いない。

 後は魔力を操れるようになるのは俺次第、彼女も遠回しでそう言っていた。


「……俺、本当に魔法を使えるようになるのかな」


 この世界に、異世界に溶け込められるとわかった安堵感と同時に不安感が滲む。

 ユニークスキル、とか、ユニーク魔法とか。物語に夢見た特殊能力ワードだ。

 この世界でならではのことだとわかっている。

 でも俺は現実で、地球にいた自分は死んでいるのは確かなんだ。

 そうでないのなら、俺の魂が本来の体の持ち主である子供の体に入り込んだんだから。


「……やらなきゃ、だめだよな」


 両手を拳にして強く握る。なら、俺は自分のできる範囲で努力する。

 地球にいた時も、俺はそういう努力しかできないんだ。

 限界を超えるような努力を欠かさないと固く決意したのだ。


「おーおーやってんねぇやってんねぇ」

「師匠……胸を押し当てないでください」


 アーテルはオービスの頭に胸をあてがう。

 重い……絶対、からかうためにわざとやってる、性格悪い人だ。


「お前、まだまだちゃんとできてないけど、体の内側に這わせることはできるようになったみたいだなぁ、いい子いい子ー」

「や、やめてくださいっ」


 師匠は強引に抱き着いてくる。

 なんなんだ、今までこうやってふざけて密着してくることあんまりなかったのに。

 ……? いいや、そうだった、か?

 ここ最近で、寝室で裸同然の彼女に服を着させたり、風呂場に連行されたり。

 ……いい思い出ないな。

 普通の美女ならいい思いになるんだろうけど、師匠は別だ。

 一歩間違えたら殺されるかもしれない危険を感じながらいるんだ。

 下手に欲情すれば俺の首は飛んでいてもおかしくない。


「……んー? イケナイこと想像してるだろ? エッチ」

「エッチ、って、師匠がだらしないんでしょう!?」

「そんなことをいう弟子に魔力を外に出す方法を教えてやろうと思った師匠に対する態度じゃねえなぁ? あーあー、教えてやらなくてもいいんだけどなー?」

「……え? それ、本当ですか?」

「学習しない猿じゃねえなら自分で気づけ、バーカ」

「な、なんでですか!?」

「まず、師匠の体をいやらしい目で見てからヒントを教えてやるって言ってるだけだろー?」

「俺、まだ思春期前ですよ!?」

「ふふーん、でもメンタルは成人男性なんだろー? あぁ、でも一回はエッチな目で見たんだっけかー……どうよ?」


 師匠はわざと両手で横から自分の胸の横に手を当てて、胸を寄せてあげる風に谷間を見せつけて来る。


「師匠は子供に手を出す変態ですか!?」

「あらぁ、素直じゃねぇなぁ……? 師匠のおっぱい拝めるのが嬉しくねえのかぁ? ほれほれ」


 わざと師匠は自分の豊満な胸を揺らしてくる。

 この人、わざとだ。というか、お風呂の時とかそんな感じじゃなかったのに、急になんだ!?


「俺は好きな人以外に欲情したくないんです!! 師匠はタイプじゃないので!!」

「ほぉー? 転生前の世界に惚れてた女がいた口だなぁ? 誰よ?」

「だ、誰って……うわぁっ!?」


 師匠は急に抱き着いてくる。

 背中に急に手を回して、指の腹で触られてなんだかくすぐったい。


「何するんですか師匠!? く、くすぐったっ」

「……魔力の波は安定してんなぁ、吐き出し口が小さいだけか」

「? ……吐き出し口?」

「聞いて喜べぇデーシ♡ お前の魔力の吐き出す入り口がちいせぇみたいだぜ?」

「どういうことですか?」


 師匠は俺の背中を撫でながら、何かを確認する指使いで撫でてくる。


「……体がお前の魂に慣れてきてるのもあるが、ソイツの体は魔力を持ってない人間だったていうだけの話さ。随分と面倒なタイプに引っかかったな」

「え? それって、どういう」

「お前が転生体として選んだ人間の体には魔力を持たない体質の体だった、だから余計魔力の滞りがあるって話だ。だから、出す穴があれば自然と魔力の通りがよくなるっ、」

「うわぁっ!! あぁ、っうぅっ」


 まるでマッサージ機にマッサージしてもらっている時の感覚が背中に走る。

 気持ちよくて、体が脱力していく。


「お前のメンタルは気持ちいんだろうが、体は相当凝ってる感じだなぁ……おらよっ」

「って、なにするんですかぁ!? あ、あぅ、うぁああああああああああああああ!!」

「……どうよ?」

「はぁ、はぁ……うぅ、体がなんか、軽いっ!?」

「当たり前だろ? 精神と体が正しい循環ができてない状態で過ごしてたんだぞ? 相当体の負荷だったコリの魔力を体から通すようにしたんだ。しばらくは魔力を体に流す訓練は禁止な」

「え? で、れもぉ……っ」


 視界が一瞬暗転する、師匠の胸に倒れ込みながらうっすらある自我をなんとか保つ。

 口が回っていないことにも俺は気づかず、ぼんやりとした意識の中で師匠を見る。


「だーめだ、魔力酔い状態なんだから休んでろバカ弟子」

「れ、れもぉ……」

「たくっ……しかたないねぇ。今日は特別に師匠が抱っこしてやる」

「うぇ……?」


 師匠は俺を抱き上げると、屋敷の俺の部屋へと向かい始める。

 玄関から階段を通り、二階の俺の部屋へと上がっていく。


「ひ、ひひょぉ……らいひょうぶれすっれぇ……」

「何言ってんだか、この馬鹿弟子は……いいからベットで寝てろ」


 師匠は俺をベットに下ろす。

 俺は体を起き上がらせられなくて、師匠の顔をじっと見ることしかできない。


「ほーれ、いいから寝ろ。おやすみ……マイリトルボーイ」


 師匠の冷たい手が気持ちよくて、思考が意識を手放していく。

 いつもより優しい表情をしていた気がするのを眺めながら、冷たくて気持ちいい手の温度に縋って、ようやく落ち着いてオービスは眠りについた。

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