運命のカウントダウン
戦艦大和が沈む事は、あらかじめ定められていた運命であったのかもしれない。日本海軍の栄光と挫折を味わったこの大艦は、沈み行く運命であった。
だが、大和が沈むという事は、誰の目にも信じがたい事実であり、到底受容する事は、出来ない。不沈戦艦の戦艦大和が沈む事は有り得ない。
ホテル大和が、営業停止になるなど、誰も考えたくなかった。目の前に広がるのは、最早何の力もない鉄の塊であった。死ぬのなら、沖縄の海で。
そう思った兵士は多いだろう。しかし、運命という奴は冷酷であった。大和乗員は、アメリカ海軍の戦闘機に命をあっさりと奪われていく。
グラマンやシコルスキーの目にも鮮やかな爆撃が、大和を無力化させる。救助用ボートが役に立たないほど、多くの乗員が海に投げ出された。
アメリカ海軍の目的は、始めから一つしかなかった。戦艦大和の壊滅。大和を撃沈すれば、およそ沖縄戦に勝利したも同じである。
日本海軍の息の根を止めろ。そんな声が聞こえて来る。大和甲板上で死ぬ者。身体が爆風で吹き飛ばされ、跡形もなくなり死んでいった者。海中で、救命胴衣もなしにさ迷っている者。機銃近くで負傷者を必死で介護する者。
それらの光景は、最早いつもの大和の姿ではなく、地獄絵図だった。大和の兵装も、今となっては役に立たなかった。沈み行く運命のカウントダウンは、もう0に近づきつつあった。
菊一号作戦も、大和を失えば、失敗したのも同じ事。いつ退艦命令や、総員退去の命令が出てもおかしくはない。
この大事な戦いでも、日本海軍はinitiativeを取る事が出来なかった。




