連合艦隊司令長官 小沢治三郎大将の訓示
いよいよ、その時を迎えた。
戦艦大和は、沖縄への米軍侵攻を阻止するべく、沖縄への出撃命令が出された。
これは、通称菊一号作戦と呼ばれ、護衛戦闘機すらまともに出せない、水上特攻であったと考えられている。
伊佐野勝男三等兵曹も、この作戦に参加する事になる。
大和乗組員には、出撃前に何日間か休暇が与えられ、それぞれが人生最期になるかも知れない時間を、大切な人と過ごした。
この菊一号作戦は、日本海軍の極秘事項であり、一般国民に知られるようになるのは、戦後の事である。
そして、ついに出撃の朝を迎えた。出撃に際して、総員約3000名を越える士官・下士官・兵が甲板に整列した。そこで、連合艦隊司令長官小沢治三郎大将の代理人である、通信科の中佐が激励文を読み上げた。
「最早、我が方に勝ち目はない。そんな事は、諸君等も分かっているだろう。しかし、我々にもプライドがある。結果はさして重要ではない。日本の領土である沖縄に対して、我々が何も出来なかったのでは、これは、日本海軍の末代までの恥となる。たとえ全滅しても、最後の最期までただの一兵になっても戦う。それが我々のスタイルである。諸君らを生きて日本に戻す事が出来ないかもしれない。本来ならそのような作戦はとるべきではない。だが、戦艦大和と共に死ねる事を心から誇りに思って欲しい。悪あがきは日本海軍のお家芸だ。武運を祈る。連合艦隊司令長官 小沢治三郎」大和乗組員は、それを聞くと、「うオーぉ!!」と雄叫びを上げた。
彼等の士気は一気に上がった。
たとえ、ここで死ぬ事になっても、自分達の死は無駄ではない。そうと分かれば、迷うことは何もない。今、ホテル大和の最後の戦いが始まろうとしていた。




