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ホテル大和~史上最高にして最低の戦艦~  作者: 佐久間五十六


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血の代償

 兵隊は死ぬ事を前提条件として使われている。

 兵隊自身も当然、死ぬ事を覚悟しており、戦いの中で、死ねるのならば本望だと思っている人間は多い。

 だが、そんな彼等とて自分達の死が無駄死にと言われるのは耐えられない。

 というよりも彼等にとっては、命は一つしかない。国家の為に、命を捧げる事を誓い、その国家が存亡の危機であるからこそ、戦っている訳である。

 にも関わらず、そんな死を無駄だと切り捨てるのは、銃後の国民のする事ではない。

 後世の歴史家がそれを言うのは、百歩譲って良いとしても彼等の死が無駄だったのかという事を、考えさせるのはあまりにも酷だろう。

 アメリカとイギリスという強大な敵を前にして、一人の兵隊も死なせる事なく、戦争に勝てるなど有り得ない話である。

 だから、兵隊が死ぬ事は無駄だとか無駄ではないというような次元の話ではない。

 そもそも、戦争というのは兵隊の殺しあいである。兵器はどんどん強大化し、巨大化し、威力を増して来る。

 ついには地球を破滅させるような兵器まで登場する時代である。

 それでも国家を守りたいと思う兵隊の死を無駄であると吐き捨てるのは、暴論以外の何物でもない。

 血の代償を持ってしても何も思わない大和民族の弱点かもしれない。

 アングロ=サクソン族である欧米人なら、きっとそうは思わない。

 一人の死であっても同胞の死が、犠牲があれば彼等は剣をとる。ましてや、国家の為に戦って死んでいった戦死者を、無駄死にであったと断罪し、まるで自分は神様かの如く振る舞ったりはしない。

 日本人の靖国神社に対する見方を見れば、それは一目同然である。

 靖国で会おうと言って亡くなって行ったのは、誰のためか。守りたかったのは日本人の未来とその家族ではなかったのか。

 無駄死にでもいい。ただ戦争を止める為に、アメリカに勝つんだ。

 それが当時の兵隊の一般的な考え方であった。俺は死にたくないなどと言うのは、高級貴族や幹部クラスの一部の士官だけであり、人柱になってでも国を皇国を守りたいと願っていた人間が多数を占めていた。

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