暗号士~東京帝国大学予備士官~
暗号士という海軍用語がある。東京帝国大学出身の予備士官の事を海軍では、暗号士と呼んだ。
名前の由来は定かではないが、暗号分野を担当していた訳ではなさそうである。
他大学の予備士官も、東京帝国大学出身の予備士官も、階級や待遇で差別されていた訳ではない。
だが、こうした区分けがなされている所を見ると、本音と建前は異なっていた事は、容易に想像出来る。
東京帝国大学とは、現在の国立東京大学の事で、今も当時も日本一の最高学府の地位をほしいままにしている。
きっと、暗号士の名前の由来も、解読不可能な暗号でもスラスラと、解いてしまう知的レベルの高さを持っているところから来たのだろう。これはあくまで推測だが。
東京帝国大学は、入学する為には並大抵の勉強量では入学出来ない。しかも、東京帝国大学というブランドの持つ力は大きく、ライバルも吐いて捨てる程存在した。そんな難関をくぐり抜けた学生が軍隊でも活躍する事は目に見えていた。
今と違い、当時は大学生というだけでエリートと呼ばれた時代だった。大学への進学率も驚く程低かった。
大本営も、最後の最後まで大学生の召集は見送ってきた。次の時代を担う、そんなような存在に片道切符で特攻に行けとはとても言えなかった。
しかし、戦局の悪化により、大学生が軍隊に召集される、いわゆる学徒動員は、優秀な人材をたくさん戦地に送ったのも、仕方がない。
それだけ戦局が悪化していた。総力戦とはそういうものである。若くて優秀な者ほど前線に送られた。彼等は何の悔いもなく、国の誉として死んでいった。
大学生が戦争に行かなければならないような、そのような国家は末期的としか言い様がない。エリートだろうがスペア(予備士)はスペア、差別はされなかった。




