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ホテル大和~史上最高にして最低の戦艦~  作者: 佐久間五十六


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入湯上陸

 下士官や兵隊の入浴は、特殊な者を除いては3日に一度。

 そこで軍港に入った時は、常日頃不自由している風呂にゆっくり浸かって来いという親心から、入湯上陸という名前の外泊が、許可される。(艦艇では搭載された真水に制限がある為。) 

 上等下士官の場合で、その人員の3分の2が、その他下士官だと2分の1が一晩おきに、兵隊だと4分の1が4日に一晩、最下級の一等兵だと、外泊はなく週に一度の半舷上陸しか許されなかった。

 それよりも階級が上の士官も、上陸するまでは自由には風呂に入る事が出来なかった。

 現在の海上自衛隊は、海水を真水に替える技術があるため、そこまで昔ほど困ってはいないが、真水の貴重さは変わっていない。

 この入湯上陸こそ、海軍軍人にとっての唯一の外出・外泊の機会てあったのである。

 喧嘩は御法度であり、一度問題を起こせば外出の機会がなくなってしまうことになる。

 当時は、海軍に入隊すれば飯は旨いし、給料は高いと評判であったから、身の危険がある仕事とはいえ、簡単に海軍以上の職場を見つける事は至難の技であった。

 まして、大和のような旗艦ともなれば、まるでホテルかと見間違うような、豪華な食事が出され、エアコン完備の快適な生活から、ホテル大和と揶揄されたほどである。

 階級が低いうちは何かと苦労がたえないが、それは日本海軍に限られた事ではないだろう。下っ端の下積み時代というものは、どんな業界てあっても苦労は存在するものである。

 軍隊という所は、それがはっきりしているだけの話である。

 海軍士官の酒癖の悪さは、かなり国民にも知られていて、横須賀や呉といった大きな軍港のある街では、必ずと言って良い程、飲み屋に海軍士官を連れて行く場合は、何名かのお供がついて行った。

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