自艦の位置を知れば百戦危うからず
簡単に艦隊や艦艇を動かすと言っても、事はそう簡単ではない。様々なデータを精確に読み取り、それをアナライズ(分析)し、見極めなければならないからだ。
それだけではなく、広大な海で自艦の位置を特定する事が出来なければ、それは自殺行為である。
日本海軍には、2つの艦位測定方法が存在した。陸岸に近い航海の場合には陸測を行う。陸上に定めたニ乃至三の目標から方位線を求めると、それが現在の艦位となる。しかしながら、広大な海においては、陸地から遥かに離れた場所の方が多く、この方法ではまだ充分ではない。
そこで、役に立つのが、天体観測(天測)という方法である。これは、六分儀によって天体(太陽や星)の高度を測り、これに所要の修正と計算、そして方位線を求める。さらに、別の方位線を求めて出た交点が艦位となる。
ただ、空が厚い雲に覆われている場合は、使用不可能である。
これら二つの方法を使い、組み合わせ艦位を特定していた。最も現在では、GPSや人工衛星の登場により、このようなアナログな方法は使われなくなった。
こうして自艦の位置を測りながら目的地に向かっていた。それは大和型戦艦の様な巨艦であろうとも、駆逐艦の様な小型艦艇でも、同じ様に行われていた。
そもそも、自艦がどこを航海しているのか、という事を知らなければ、目的地や敵部隊にたどり着く事は出来ない。それは、戦いにおいて自艦が誰と戦い、どのような勝ち方をするかという戦略にも、同じ事が言える。
自分の実力に見合わない行動をしているようでは、勝てる戦も取りこぼしてしまうだろう。
航海士ならば必ず知っておかなければならない事だろう。デジタル化した現代では、残念ながら廃れてしまったが、それでも、GPSが壊れたら、陸測や天測をする技術は必要である。




