東洋のジブラルタル 日本の真珠湾
実戦配備とは言っても、大和は最前線に配備されていたわけではない。
連合艦隊の旗艦として、日本の真珠湾とも、東洋のジブラルタルとも言われたトラック島泊地に配備される。
トラック島は、マリアナ諸島以南かつニューギニア以北で赤道よりもやや北にある小さな島だった。
この島が日本の真珠湾と呼ばれる由縁は、その地理的特性にある。
日本、ハワイ、オーストラリアを三角形で表してみると、トラック島がその中心に位置している事が一目で分かる。
アメリカに睨みを利かせるには、この島に巨大戦艦大和や武蔵を置いておく事は、戦略的に大変意味があった。
当時の連合艦隊司令長官であった、山本五十六はこう嘆いている。
「ニミッツはハワイにいるのに、なぜ俺はトラックにいなければならないのか?」
総力戦時代になって戦争の形態が変わり、それならばさっさと場所を替えれば良かった。
しかし、そこにも海軍の悪しき伝統が根強く残っていたのだ。連合艦隊司令長官は、常に先頭の旗艦に乗るべし。
という、海軍の伝統があった。しかしながら、そうは言ってもトラック島に出て行くのも仕方がない面はあった。
当時、石油はシンガポールから輸送していたのであるが、柱島にいたのではシーレーンが脅かされ動きが取れなくなってしまう。
そこで、トラック島まで出て行かざるを得ないと。
西太平洋カロリン諸島の島で、現在はミクロネシア連邦に属するこの島が、日本軍にとっては戦略的に意味があるという事は理解出来ても、つまらない日本海軍の無意味な不文律によって、有効な一撃を加えられなくなってしまった事は、日本の敗因の一つだと考えていいだろう良いだろう。
日本海軍はつまらない情報にとらわれて、効果的な戦いを繰り広げられなかった。
このトラックでずっと、大和ホテルは営業されていた。それがこのトラック島での大和のシンボルだった。




