日本海軍流の隠語
日本海軍には、世にも面白い隠語や単語があった。
駆逐艦乗りは、自らの事を乞食商売、自ら俥引きなどと揶揄していたし、甲板士官は冬であっても、裸足でズボンの裾を膝までまくりあげて、けたたましく呼ぶ格好が、鶏に似ている事から、ニワトリと呼ばれていた。
機嫌が悪い事を海軍風に言うと、ゴキが悪い。となる。ゴキはご機嫌から来ている様だ。
同期相当の人間はコレスと言われた。
海軍では、モノを盗む事をギンバイ(銀蠅)という。恐らくは食べ物に群がる蠅になぞらえて、このような隠語を使うようになったのかもしれない。
古参兵長の若年兵いじめ(下級兵への八つ当たり)はジャクルと言われた。
また、海軍士官が用いる隠語には、イモを掘るというものもあった。酒に酔って乱暴をすることで、イモ掘りを士官がやってしまい、料亭や食事処で出入り禁止になることもしょっちゅうあった。
中にはこんな隠語もある。接合部や軸などの周りにする詰め物で、液体や気体が漏れるのを防ぐパッキンというものがある。海軍では、このパッキンにちなんで、堅物あるいは融通の利かない兵隊の事を、陰でパッキンと呼んでいた。
太平洋戦争を戦った日本とアメリカ双方で、共通のものに対して隠語を用いた例もある。艦隊決戦用の高速で、運動性能の高い駆逐艦を用いて、陸兵と物資の輸送を開始した。これを日本側は、ネズミ輸送と呼びアメリカは、トーキョーエキスプレスと称していた。
部隊の最前線で使われていたものもある。レッコーと言われた隠語がある。レッコーとは、英語のレッツゴーから来ている隠語で、海軍では捨てるあるいは離すという意味で使われた。
地方の方言が、隠語のように使われた例もある。二才は、鹿児島弁で美男子の若者、色男をさす。日本海軍には、明治の建軍以来薩摩派閥の人間が、多くその権力に幅を利かせていたために、このような方言が、隠語として海軍で使われた節があるのだろう。




