第一士官次室
大きな艦には、必ず第一士官次室(通称ガンルーム)がもれなくあった。
第一士官次室とは、中尉、少尉及び少尉候補生の公室で、彼らの食堂兼休憩室であった。
なぜこの部屋の事を「gun room」ガンルームというのか?その語源は、イギリス海軍に由来するものであった。
イギリス海軍の軍艦では、その昔小銃や拳銃、剣などを格納庫としていた武器庫を、若い士官や少尉候補生の公室として使っていた事から、日本海軍もそれに範を取ったという。
gun roomは、軍艦の生気を一室に集めたが如くであり、葢し士官次室の風格は、その艦全骨豊の士気如何を察するに足らん。(一艦の士気の源泉)
またgun roomに集う若手士官の躾教育やとりまとめ役、言い換えれば兄貴分役の事を通称ケプガンという。(captain of gun room )が詰まった言い方で、第一士官次室の室長という意味になる。
兵科出身最先任者の古参中尉が、大抵はケプガンの役を引き受けるのが決まりであった。
また、大きな艦にはそれ以上の階級の人間が使用する、士官室もあった。巡洋艦以上の艦には、必ずあったという。士官室は、分隊長クラスの大尉以上から副長までが使える。一部屋の広さは、4畳半よりも少し広い程度のものであったという。
いくら海軍兵学校を卒業したエリートであっても、部隊にいるのは部下ばかりとは限らない。
特に大和級の超ド級戦艦ならば、上には上がいる。軍隊とは、どこまでも上下関係に悩まされてしまうのは、必然であり軍人にとっては宿命のようなものであった。どこに行っても上下関係はついてまわる。
連合艦隊司令長官になっても、海軍大臣や天皇陛下がおられるし、海軍大将であっても先任序列はある。海軍でも陸軍でもなった以上は、人間関係のしがらみから抜け出す事は、不可能だと考えた方が良さそうである。




