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テイマー、魔法

「ふむ、今日はどうする?」

「そうですね……………私達はまだ選べる仕事は少ないですし」

今日も生活を稼ぐためにパーティーを組んでいるメイフルと一緒に依頼が貼られている掲示板を見ている。

「やっぱり報酬がいい仕事は討伐系だが、昨日は俺が選んだから今日はメイフルが決めていいぞ」

「いいのですか? ん~」

依頼書と睨めっこして悩む彼女に俺は広い心を持って対応する。

今日は気分がいいからな。ゆっくりと選ぶがいい。

『昨日の主様は極悪人だったぜ? あの女達が可哀想になっちまった』

念話してくるフラジェウィップはどこか愉快そうに声をかけてきた。

極悪人とは失礼だな。あの女共は今まで新人を食い物にして好き勝手に生きてきたのは知ってんだろ?

洗いざらい吐かせたんだからよ。

『それで金貨10を15枚にする主様も十分酷いぜ?』

罪には罰を。それだけのことをしたのだからそれなりの重い罰が下されるのは当然のことだ。

別に命を奪うわけでもないんだ。その金貨だって俺だけで独占するつもりはねえぞ。

孤児院とかそういうところに寄付する予定だ。

もっともその後であの女共がまともな精神状態をしているかは知ったことじゃねえが。

『酷い主様だな…………』

何を言うか。女って生物は徹底的に潰しておかないと後々厄介になるんだぞ?

利用できるものは全て利用して社会的、精神的、肉体的に少しずつ殺しにくる。それも自分の手を汚さず、それを陰で見て笑う。女以上に醜悪な生物はいねえよ。

『主様の過去の記憶を見た俺にとってはその言葉に重みを感じるぜ…………………』

当然だ。実体験したんだから。

おまけに女は泣けば周囲を味方につける卑怯な手もあるんだ。だから我慢してあの女を宿まで誘導したんだ。

ああいう女は嘘泣きも武器にしてくる奴だからな。

そのせいで俺は何度濡れ衣を着せられたか……………。

『ほいほい。ん? ならよ、主様よ。お前の隣にいる女は支配下に置かねえのかよ?』

ん? ああ、こいつは無害だ。

大抵の女は目を見たらどういう奴かわかる。だが、この女は欲に塗れた考えも、邪な気持ちも、欺こうとする演技力もない。日本じゃまずいない純粋な女だ。

仮に俺を出し抜こうと考えていたら気づくし、何度か遠回しにそれっぽい話を振ってみたけどその意味すらもわからないって顔してたぞ。

言葉、行動、視線。全て観察してみたが、彼女は白に近いグレーってところだ。

『ほう……………』

それに仮に彼女を支配下に置いて俺の言うことを全てYESって答えるようになったら周囲に怪しまれる可能性だって生まれる。

こいつ、脅迫してるんじゃないか? ってな。

0%と1%とで違う。疑惑も疑問を抱かせない様に気を付けないとこの街での生活が難しくなる。

だから彼女はこのまま対等なパーティーメンバーとして俺と行動してもらう。

俺の言うこともよく聞くし、気も使える。何かあればちゃんと言ってくる。

……………………そうだな、俺に惚れてくれたら色々とやりやすくて助かる。

まぁ、そこまで期待はしないが。

「あの、フォーティさん」

「ん? 決まったのか?」

「あ、いえ、フォーティさんって治癒魔法以外に何か魔法が使えますか?」

「いや、使えないな。そもそもどうやったら魔法って使えるようになるんだ?」

「え、あ、そうでしたね。フォーティさんは記憶が無くなってわからないんでしたね」

今も俺が記憶喪失だと信じ切っている彼女は本当に扱いが楽でいい。

「でしたら仕事の前に魔法の適性を調べに行きませんか? 魔法屋に行けば本もありますし、新しい魔法も覚えられるかもしれませんよ」

「魔法屋に本…………………?」

どうして魔法屋に本があるのか怪訝すると、彼女は教えてくれた。

「人によって魔法に適性があります。私なら火、雷、光の三属性の適性はありますが、それ以外は適性がないので覚えられません。フォーティさんは治癒魔法の適性があるのは確定してますから他に適性があるのか調べて貰いましょう」

そう説明しながら俺は彼女に連れられて冒険者ギルドを出た。

「適性のある魔法がありましたら魔法書を読めば新しい魔法が使えるようになりますよ」

なるほど、魔法屋に本があるのはそういうことだったのか。

「あ、でも、魔法書は高いので適性があるか調べるだけになりますが………………………」

「一冊どれぐらいするんだ?」

「…………………………銀貨50枚は」

高いな、俺の俺達では手が届かない値段だ。

とりあえず治癒魔法以外にも適性があるかだけでも調べてみるのもいいだろう。

俺も攻撃魔法とか覚えて魔法を使ってみたいし。

断る理由もない俺はメイフルに勧められて魔法屋に訪れると、そこにはいかにも魔女という言葉に相応しい風貌をした老婆がいた。

「いらっしゃい」

「あの、この人の適性を調べて欲しいのですが」

「それなら銀貨2枚だね」

「まぁ、必要出費か………………………」

今後の事についても使える魔法の適性は知っておきたい俺は渋々銀貨を払う。

「それじゃそこに座りな」

言われるがままに俺は水晶の前に座ると、魔女の婆さんが水晶に手をかざす。

「ふむ………………お前さんには治癒魔法と精神魔法に適性があるね」

「精神魔法……………………?」

風や炎といった自然属性みたいな魔法じゃねえのか?

「治癒も精神もどちらも珍しい魔法さ。大事にするんだよ」

「いや、治癒はともかく精神魔法ってどんな魔法だ?」

「知りたきゃ金を払いな。銀貨1枚だよ」

そこはサービスしてくれねえのかよ、この婆さん……………。まぁ、確かに適性を調べるで銀貨2枚だからその魔法の特徴を教えるのはまた別口だな。俺だって金を取る。

仕方がなく追加で銀貨1枚払って精神魔法の特徴を教えて貰う。

「精神魔法は対象の精神を操る魔法さ。眠らせたり、幻を見せたり、精神を操り傀儡にしたり、精神を壊したり、ね。とても危険な魔法さ。使う時は気を付けな」

思っていた以上にえげつない魔法だな。

「まぁ、精神を壊すようになるまでよほど鍛錬を積まないとできやしないがね。お前さんが覚えられたとしてもよくて幻を見せる程度さ」

うち、もう幻影を使う魔物がいるのだが、あまり使い道がなさそうだな。

まぁ、どちらにしろ今は金がないから精神魔法は覚えられないからどうこう考えても意味がないか。

とにかく俺の魔法適性がわかっただけでも収穫か。

「メイフル、ギルドに戻って依頼を受けるぞ」

「はい」

失った分の金を取り戻さないと。

俺とメイフルはギルドに戻ってコボルト討伐の依頼を受けて街を出た。

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