テイマー、愉悦
ロウが大群のラフェルウルフのボスになって俺はその全てをテイムし、冒険者としての初依頼であるゴブリン退治をする為にゴブリンが棲息しているとされる場所までやってきたのだが………………………。
「バウバウ!」
ロウの指揮の下、統率の取れた無駄のない動きでラフェルウルフ達はゴブリン達を次々に殲滅している。
俺とメイフルは何もせず、ただゴブリン達がやられていくのを呆然と眺めているだけだ。
「あ、私。レベルが12になりました」
「俺も17になった」
依頼を受ける際に聞いた前情報よりもゴブリンの数が多く、更にはモブゴブリンも数体いた。
完全な情報違いで普通の冒険者なら逃走するのが正しい判断だ。
ゴブリンが人間の子供、小学低学年くらいの背丈に対してモブゴブリンは俺よりも背丈がある巨漢だ。
逃げるのが正しい判断だろうが、ラフェルウルフ達の猛攻によって一瞬でモブゴブリンは帰らぬ人ならぬ帰らぬモブゴブリンになった。南無。
そして俺達はレベルが上がったことによって職業能力が解放され、それによって俺は『魔物強化』の能力を獲得した。
獲得と同時に心なしかロウ達の動きが更に速くなっている気がしてならない。
ゴブリン達の殲滅を任せている俺達はゴブリン達が倒されていく光景を眺めながらステイタスを見ていると、俺の傍にいるロウが鼻を鳴らした。
「ガウ」
そしてロウが俺に何かを知らせようと声をかけ、ゴブリン達とは違う方向を見る。
その時、誰かが物陰に隠れようとした姿が見えた。
「どうかしましたか?」
「いや、俺の予想通り。あの女共、俺達の様子を窺っていた」
「ええ!? ど、どうすれば……………………」
「落ち着け。向こうだって馬鹿じゃない。この数のラフェルウルフを相手にできると思える程思い上がってはいないだろう。損得ぐらい計算する頭はあるはずだ」
「そ、そうですよね……………………」
俺の説明に安堵する彼女。
そう、あの女共は俺達を襲うなんてリスクが高い真似はしないだろう。
それよりも有効活用できる方法を取ってくるに違いない。
なら―――
俺達はゴブリン退治を終えて街へ帰還する。ロウは群れのボスとして仲間を放っておくことはできずに残ることを選択した。
いいボスだ、と思いながら俺達は街へ帰還するとすぐに冒険者ギルドに赴き、依頼の達成と事前に知らされていた数より多いこととモブゴブリンの存在について話し、証拠品を見せて報酬額を上げて貰った。
報酬は銀貨14枚まで上がって俺とメイフルで山分けにする。
「では、また明日もお会いしましょう」
「ああ」
ギルドを出てすぐに彼女と別れた。俺も自分の宿に向かう道中で例の女達の内一人と出会った。
「ねぇ、少し時間をくれないかしら?」
「ええ、いいですよ」
他二人の仲間は見えない。ならそういうことだろう。
「俺が泊まる予定の宿でも構いませんか? 今日は初めての依頼で予想以上に疲れてしまいましたので」
「ええ構わないわ」
了承する女1は自然な動作で俺の腕に抱き着き、胸を押し当ててくる。
「今朝はせっかくのご厚意を無下にしてしまい申し訳ありません」
「気にしていないわ。新人なら自分の力を試したくて当然だもの。貴方が無事に帰ってきただけでも嬉しいわ」
「ありがとうございます」
他愛もない会話をしつつ俺は昨日泊まった宿に訪れ、数日分の宿代を支払って部屋に向かう。
ベッドとテーブル、クローゼットがあるだけの質素な部屋。その部屋に入ると女1は俺に気づかれない様に鍵を閉めた。
「それでどのようなご用件でしょうか?」
「単刀直入に言うわ。私のパーティーに入る気はないかしら?」
「それはまた……………貴女は熟練の冒険者でしたよね? 新人である俺が入っても足手纏いにしかならないと思いますが?」
「普通わね。でも、偶然見ちゃったのよ。貴方が沢山のラフェルウルフを使役しているところを」
偶然ね…………覗き見していた奴がよく言う。
「私達はもっと上を目指したいの。その為には強い仲間がいる。テイマーとしての貴方の実力を見込んでの勧誘よ。どうかしら?」
「そう言われましても………………彼女は誘わないのですか?」
「こう言ってはなんだけど、貴方はあの女に騙されているわ。人が良さそうな顔をしているけど、あれは性根からの悪女ね。自分が楽してレベルを上げようと貴方を利用しているのよ。同じ女である私が言うのだから間違いないわ。きっと絞れるところまで絞って貴方を捨てる気ね」
よくもまぁここまで言えるもんだ。
あのビッチ妹みたいによく舌が回る。
女1は胸元をはだけさせ、そっと俺に歩み寄る。
「あんな女を捨てて私達と一緒に冒険をしましょ? それなりにいい思いもさせてあげるから」
これ見よがしに密着してくる女1に俺は女1の腰に腕を回して抱き着く。
それに笑みを深める女1は床に倒れる。
「ぁ……………………ぉ………………………」
「本当に女はクソだな、そんな色仕掛けで本当に自分の都合よく操れると本気で思っていたのか?」
俺の袖から蛇が姿を見せる
ベネノサーペントと呼ばれる小さな魔物。この魔物の牙には麻痺性の毒があり、噛まれれば全身が麻痺する。こうして接触してくると分かっていたから毒性の魔物を探して使役できるようにしていた。
「………………ど………………………て………………………」
「どうして? そんなもんお前等が俺を利用しようと企んでいるのがわかりやすかったから対策ぐらい立てておくだろう? さっきのメイフルは俺を利用しようとしているって言葉、アレ、お前等がそう思っていることぐらいお見通しなんだよ。今朝も森のなかで俺達を襲おうと企んでいたことも含めてな」
そう、この女共はラフェルウルフを使役している俺を殺すよりも誘惑して利用しようと企むことぐらい容易に想像できる。だからそれを利用した。
「どうせお前は所詮は男だ、ちょっと誘惑してやればこっちの言うことなんて何でも聞く、とか思っていたんだろ?」
「――――!」
「本当に魂胆が見え見え。随分頭が緩い尻軽女なこと」
本当にあのビッチ妹を思い出させる。
男なら誰でも股を開くあのビッチめ。さっさと地獄に落ちろ。
「まぁ、そんなことは今はどうでもいい」
俺はフラジェウィップを持って女1を打つ。
「まずはお前を支配下に置いて残りの二人をここに呼び出して貰うとしよう」
再度鞭で女を打つ。
「そして、お前等三人を支配下に置いたら俺の為に金を稼いできてもらおうか。そうだな、まずは十日で金貨10枚稼いできてもらうとしよう」
更に鞭で女を打つ。
「身体を売り続ければ簡単に稼げる楽な商売だろう? 頭の緩い尻軽女には打ってつけの仕事だ」
また女を打つ。
女の目が恐怖に打ち震えているのがわかる。
その瞳を見る度に俺は全身が痺れるような快感に身体がゾクゾクする。
「俺はな、お前みたいに自分の都合の事しか考えないクソ女が殺したいぐらいに嫌いなんだよ。そういう女に苦痛と絶望を与えてやりたいんだ。俺がされてきたようにな!」
強く鞭で女を打つ。
「喜べ、お前は俺が支配する最初の女だ。他二人同様に人助けに貢献させてやる。慰め者としてな。そうすれば他の女が襲われる心配もないってわけ。俺って優しいだろ?」
もう一度鞭で女を打つ。
ああ、やばい。俺はどうしようもないぐらいに愉しんでる。
やっていることは完全な外道なのに、深みに嵌りそうだ。
まぁ、こいつも新人を犠牲にして楽してるんだ。因果応報ってな。
そして俺は鞭打ちを終えて女1が動けるようになると、女1は俺の前で膝をつく。
「なんなりとご命令ください」
「ああ」
ああ、こういうのを愉悦というのか。