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テイマー、武器

記憶喪失という設定で世間知らずと嘘を吹き込んだ俺はメイフルの依頼を手伝い、仲間になることにした。

素直で人を疑うことも知らないような純粋な彼女を騙したことに少しは良心が痛むも、俺は女は信用できない。こちらが利用できるところまで利用して必要ないと思えば切り捨てるつもりでいる。

それまでは仲間として行動しよう。

「ガウ!」

依頼であるマスカルフルートを採取する為に彼女が気を失っていた場所に向かう道中でロウは襲いかかってくるコボルドの喉を噛み付いて絶命させる。

「よくやった、ロウ」

「バウ!」

褒めると嬉しそうに吠える。全く愛嬌ある奴め。

俺はロウが倒したコボルドの一部を剥ぎ取る。メイフルが言うには倒した魔物の一部を冒険者ギルドに持って行けば討伐報酬が貰えるらしい。

無一文の俺にはありがたい話だ。街へ行っても金がなかったら宿に泊まれない。

「ロウちゃん、強いですね」

「まぁな」

今までの戦闘も全てロウがしてくれているからおかげで俺も助かっている。

「ブモォォォォッ!」

「オ、オーク!」

現れた三体のオーク。漫画で見たのと同じような人型の豚顔。体長は2(メートル)でまん丸のお腹が特徴の魔物。その手には太い幹のような木の棍棒を持っている。

そんなオークそれも複数相手にロウは怯まない。

真っ直ぐ突き進むように駆け出すロウにオークは棍棒を振り下ろし、ロウに当てる。

だが、ロウは煙のように姿を消した。

「ブモォ!?」

直撃したと思ったら姿が消えたロウに驚くオークの背後からロウがその鋭い牙でオークの頭をかみ砕く。

ロウは幻影の能力(スキル)で自ら幻を作り出せる。

そういえば狼は獲物の骨を粉砕するほど顎が強いって聞いたことがあったな。どれだけ強いかはわからないけど、頭蓋骨を噛み砕けるほど強いのはよくわかった。

オークの頭から血が噴出するその光景はR指定が入りそうなほどグロい。

ロウは残りの二体もその強靭な顎で骨ごと噛み砕いてその命を狩った。

俺はステイタスを見てみるとレベルが9になっていた。ロウも26に上がっている。

「わぁ、レベルが6になりましたよ、フォーティさん!」

「よかったな」

そしてオークを倒した経験値は彼女にも入っている。ステイタスにあるパーティー一覧に対象、今回の場合はメイフルを指定すると倒していなくても経験値が入るとメイフルから教わった。

本当にゲームのような世界だ………………いや、ファンタジー世界だから当然なのか?

「後4つレベルが上がれば職業能力(スキル)である魔法効果上昇が獲得できます」

「そうか」

この世界では職業は自分で決めるのではなく、神託―――神の意思によって確定される。

8歳になると教会に訪れて神託を受けるとステイタスに職業が刻まれる。そこからレベルが上がっていくと職業能力(スキル)というその職業に特化した能力(スキル)が獲得できる。

俺のテイマーとしての職業能力(スキル)|なら『調教』。

メイフルの魔導士としての職業能力(スキル)なら『魔導』。

そこからレベルを上げて専用の能力(スキル)を獲得していく。

本当にゲームの世界に迷い込んだ気分だ………………………。

ロウに魔物退治を全面的に任せながら俺は彼女と会話してこの世界の情報を入手していくと、彼女と出会った場所に到着した。

「あれです」

彼女が指したのはメロンのような果実だ。ただ形はメロンでも色が林檎のように赤い。

「ロウ」

ロウに指示をすると、ロウは跳躍。木を蹴って爪でマスカルフルートを切り落とす。

「わわっと!?」

落ちてきたマスカルフルートを見事にキャッチする。これでおれを街に持って帰れば彼女の依頼は達成する。

そう言えば………………………。

「ちなみにその果実っていくらぐらい?」

「えっと、確か市場でなら銀貨1枚でおつりがきますね」

ふむ、ならもう一つぐらい持って行ってみるか。売る為に。

「ロウ、もう一回頼む」

「バウ」

ロウにもう一度落として貰って取る。

これで魔物の報酬分も含めれば宿で一泊することぐらいはできるだろう。後は冒険者になって稼げばいい。

「では街までご案内します」

「ああ、頼む」

「あ、その前に一つ言いにくいのですが………………ロウちゃんはまだ街へは入れません」

「バウ!?」

「その、フォーティさんはまだ冒険者登録が終えていないのでテイムした魔物も登録できないんです。登録したらテイムした魔物も街へ入れます」

テイムした魔物の身分を明かすものが必要になるということか。

まぁ、ロウには悪いが一晩だけ我慢してもらうとするか。

「悪いな、ロウ。一晩だけ我慢してくれ」

「クゥゥゥン」

見るからに落ち込むロウの頭を俺は半笑いしながら撫でてやる。

落ち込むロウを慰めて俺はメイフルの案内で街へ向かう。それまでに襲いかかってくる魔物は当然の如くロウが倒し、森を抜ける。

そこから街道を沿って進んで行くと街が見えてきた。

「あれがセプテンです」

魔物の侵入を防ぐために建てられた壁はどこかの進○の巨人に酷使する気がしなくもない。

「じゃあな、ロウ。明日には来るから」

「また明日ね、ロウちゃん」

「クゥゥゥゥゥゥン…………」

つぶらな瞳と甘えるような声が俺の足を止めさせる。一人にしないで、という声が聞こえてしまう。

でも1日、そう1日だけの我慢だ。耐えてくれ、ロウ。

俺はロウに見送られながらメイフルと共に街に向かい、メイフルが街を警備している警備と思われる人に俺の事情を話すと納得したかのように頷いて通行許可をくれた。

ただし、後に銀貨1枚を支払いが必要らしい。

身分を明かせない者にはそれなりの代金を徴収する義務があった。

街に到着と同時に手痛い出費ができてしまった俺は街の中に入ると、まさにRPG。

ファンタジー世界の街だった。

「ようこそ、セプテンへ」

メイフルの歓迎の言葉と共に俺はこの世界に来て初めて街に足を踏み入れた。






「はぁ~疲れた………………」

その夜、俺は宿を取って部屋にあるベッドに倒れる。

街に来てメイフルと共に冒険者ギルドに足を運び、メイフルの依頼達成と俺の冒険者登録を終わらせて俺は魔物の討伐部位とマスカルフルートをギルドに提供して貰った結果、銀貨3枚と銅貨97枚。

この宿は一泊食事付きで銀貨1枚。街に入ったのに銀貨1枚支払わなければいけないから残りは銀貨1枚と銅貨97枚の計算になる。

明日から早速冒険という名の仕事だ。

「やることが多いな…………………」

まずこの世界に関する情報収集、それに生活する為に必要な金、住む場所。それを揃えないといけない。

あのゴミ屑以下のクソ姉のせいでせっかく揃えていた金も住む場所もまた一からやり直さないといけない。

ああ、思い出すだけで苛々する。

『おーおー、荒れてんな。主様よぉ』

「!?」

突然の声に俺は思わず起き上がって部屋の中を見渡すも誰もいない。

なんだ? 幻聴か?

『ここだ、ここ』

幻聴じゃないことに俺はその声のする方を見るとそこには俺がこの世界に転生した時から持っていた鞭、フラジェウィップがあるだけ。

まさか………………………。

『おう、そのまさかだ』

「鞭が、喋った…………………」

鞭が喋る。それに驚きはするも困惑するほどではなかった。ファンタジー世界だからそういうものがあっても不思議ではないと心のどこかで薄々そう思っていたからだ。

『その通りだが、武器が喋るのは俺のような神器じゃねえと無理だぜ』

「神器…………………? ということはやっぱり」

『ああ、主様をこの世界に転生したのは神だ』

告げられる真実に俺は戸惑いを覚えながらも尋ねる。

「どうして神は俺をこの世界に転生したんだ? それにお前は」

『まぁそういっぺんに訊かれても答えられないぜ。まぁ、無理もねえが、まずは主様をこの世界に転生させたのは特に理由はねぇ。娯楽の類だ。今、神々の世界では転生が流行っていてな、別世界の人間を選別してこの世界に転生したらどうなるかを見て楽しんでんだ』

神はろくなやつがいないと聞くが本当にそうだな。

『んで、俺は特典ってやつだ。所有者である主様が街に入ったことでチュートリアルは終了。こうして話ができるようになったってことだ。あ、俺は〈支配〉の神器フラジェウィップ。よろしくな』

「支配?」

『そうだぜ。この世界のテイマーは自分で倒した魔物を力で屈服させるか、懐柔させるかの二つに一つしかねえ』

ああ、やっぱりその辺はゲームと似た感じか。

『だが俺の能力は対象のレベルの数だけ攻撃すれば支配下に置くことができる。主様がラフェルウルフを我武者羅に当てて使役できるようになったのも俺の能力のおかげだぜ?』

なるほど、つまり我武者羅に鞭を振っていたおかげで運よくロウを支配下に置くことができたのか。

一歩間違えたらロウのお腹の中にいたな、俺………………………。

『他にできるのは支配下に置いた奴なら好きな時に好きな場所に呼び出せることと、長さを自在に変えられるだけだが、主様のレベルが上がれば俺の能力も少しずつ解放される。まずは頑張ってレベルを上げることを勧めるぜ』

中々便利な能力だ。他にもどんな能力があるか楽しみだな。

だが、やはりレベルの差は大きい。いくらこいつが便利でもレベルが離れた魔物を使役するのはやはり難しい。ロウの時は完全に油断してくれたから使役できたようなものだ。

『そして俺の一番の特徴は支配できるのは魔物だけじゃねえってとこだ』

………………………なに?

「それは………………………人間さえも支配下に置くことができるってことか?」

『ああ、その通りだ』

これまであのクソ家族から虐めを受け、自分こそが支配者かのように上から目線で見下してきた女達を今度は俺が支配できるということか………………………。

この世界にあのクソ家族がいないのは残念だが、女を支配下に置けるのは魅力的だ。

『いい目をしてるじゃねえか、主様』

「ああ」

自分でも笑っていることぐらい自覚している。今でも支配できることが知れただけでもこんなに心躍るのなら支配した時はどれだけ心が躍るのだろうか?

考えるだけでさっきまで憂鬱だった気分がどこかに吹き飛んだ。

「明日からもよろしく頼むぞ、相棒」

『任せとけ、主様』

ああ、明日が楽しみだ。


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