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テイマー、仲間

ロウの頼みで一人の女を助けることにした俺は、彼女を自分の拠点まで連れてきた。

彼女が目覚めるまで暇だったので少し早いが飯の用意に入る。

今日の献立はオークと兔モドキの串焼肉と新鮮な川の水。以上。

火をおこし、手頃なサイズに肉を切って串に刺していく。それを焼くだけという簡単な料理。

調味料一切なし。塩が恋しい………………………。

「バウ」

尻尾が千切れるぐらいに振って焼けるのを楽しみに待っているロウの口から涎が出ている。

お前はよく飽きないな、ロウよ……………。

まぁ、肉食だから飽きる飽きないはないか。

贅沢な悩みかもしれないけど、そろそろ文化的な料理が食べたい。パンとか。

「ん………………ここは………………………」

「起きたか」

「バウ」

「魔物!?」

ロウの声に驚くように反応して跳び起きる彼女はロウの顔を見て一気に顔が青くなった。

「ラ、ラフェルウルフ………………………」

「バウ!」

「ひぃ!」

吠えるロウに悲鳴を上げるロウは新しい玩具を見つけた子供のように彼女の周りをぐるぐる回りながら匂いを嗅いだり、頬を舐めたりして彼女の反応を見て楽しんでいる。

このドS狼め。

「ロウ、焼けたぞ」

「バウ!」

彼女で遊んでいるロウに肉が焼けたことを伝えるとロウは焼けた肉に食らいつく。

「え? 人…………………?」

「以外に何に見える?」

ようやく俺の存在に気付いた彼女は恐る恐るといった様子で尋ねてきた。

「あ、貴方は………………………?」

「人にものを尋ねる時は自分からじゃないか?」

「あ、ごめんなさい。メイフルです。メイフル・ヴォルセブス。職業は魔導士です」

そう言って挨拶してくる彼女――メイフルは懐からスティックのような柄に宝石がついている棒を取り出して見せてきた。

「俺はフォーティ・ラーブルだ。職業はテイマー」

名乗り出て、この名前がすんなりと口に出た。本当の名前ではないはずなのにずっと使い続けてきたように違和感が全くなかった。

「あ、ではそこのラフェルウルフはテイムされた魔物なのですね」

「ああ」

肉に食らいつくロウがテイムされた魔物だとわかると見るからにほっとしている。

「一応言っておくがお前を見つけたのはロウだ。ロウに感謝しろよ」

そもそもお前を助けようと懇願してきたのはロウなんだから。

「はい。えっと、ロウちゃん? ありがとう」

「バウ」

メイフルのお礼の言葉に返答するロウ。前々から思っていたけどロウって意外に知能が高いよな。

「で? お前はどうしてあんなところで気絶してたんだ?」

「………………………はい、私はここから北にあるセプテンという街で冒険者をしてまして、依頼であるマスカルフルートを取りに来たのですが………………………木に登っている途中で手を滑らせてしまって」

「ドジだな」

自分の失態を話した彼女に俺は素直な気持ちで答えた。

というか俺の予想通りだったじゃねえか………………………。

「つか、冒険者なら仲間を集めて依頼を受けりゃいいじゃねえか」

「私、新人で……………それに使える魔法もレベルが低いから弱くて……………」

戦力にならない、ということか。

確かに俺の治癒魔法も多少傷を癒せる程度でそれ以上はまだ無理だ。レベルとステイタスが上がれば魔法の威力もあがるのだろうけど、新人である彼女はまだ弱くて荷物にしかならない。

というよりもこの女、よく自分の情報をべらべらと話すな。助けてやった身とはいえ、普通はもう少し警戒するだろうに。ま、こっちの方が俺としては都合がいい。

見たところ彼女は嘘がつくのが下手だ。情報を聞き出すにはこれ以上にないカモだ。

その時、きゅるるるる、と可愛らしい音が鳴った。

顔を真っ赤にして腹を押える彼女に俺はそっと彼女に串焼肉を与えた。

「あ、ありがとうございます…………………」

顔を俯かせながら串肉焼きを受け取る彼女はその肉にかぶりつく。

俺も腹が減ったので食べる。うん、いつもながら口の中が肉汁でいっぱいだ。

魚も取り損ねたし………………………。

肉を噛み千切りながら俺はこれからの事について考える。

俺が今一番欲しいのは情報だ。何も知らないこの世界に関する情報を得るには情報を提供する人物が必要になる。なら………………………。

「食べながらでいいから聞いてくれ。ヴォルセブスだっけ?」

「メイフルで構いませんよ?」

「んじゃメイフル。お前の依頼、俺達が協力してもいい。なんなら仲間になってもいい」

「本当ですか!?」

「ただし条件がある。お前も俺に協力してほしい」

「何にですか…………………?」

「実はな、俺はここ一週間前の記憶がないんだ。気が付けばこの森にいた」

勿論、嘘である。

「ええ!? そ、それって記憶喪失じゃないですか!? あ、だからこの森で生活を…………………」

「ああ、どこに街があるのかも、それ以前に自分が何者かさえわからない。唯一わかるのは自分の名前と職業だけ。だからお前の仲間になる代わりに俺の記憶を取り戻すのに協力して欲しい」

「…………………わかりました。私でできることならお教えします」

「ありがとう……………………」

チョロイよ、この子。

というよりも感受性が高いな。俺の話に疑いすら抱いていない。

女は嫌いだけど、少しでも情報を得る為には必要手段だ。そこは目を瞑ろう。

それにこんな素直で嘘が下手な子はそうはいないだろうし、他で情報を探すよりかは手間も減る。

情報が手に入り次第に、後に戦力になるなら手元に置けばいいし、荷物なら適当な理由をつけて別れればいいだけの話だ。

それまでは仕方がなく仲間になろう。

「じゃ、よろしくね。メイフル」

「はい、フォーティさん。よろしくお願いします」

異世界に来て俺に仲間ができました。


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