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テイマー、使役

俺は姉に殺されて異世界に転生してしまった………………………。

「なんでやねん」

虚空に向けてツッコミを入れるも虚しさが増すばかり。とりあえずは状況整理しようと思う。

俺は就職が決まって新しく住む場所も決めて引っ越しの準備をしていた。そこで引き籠もりのクソ姉が自分勝手な理由で包丁を刺してきた。

何度も滅多刺しにされ、俺はこれまでに溜め込んだ怒りが爆発。感情のまま姉を殴り続けた。

ここまでは覚えている。

そこからの記憶がない。気が付けばこの森の中で目を覚ました。

身に覚えのない鞭とゲーム画面のようなステイタスを手にして。ついでに自分の名前も思い出せない。

「このフォーティ・ラーブルが俺の名前か? というか何で防御力と耐性がこんなに高いんだよ」

ステイタス画面を見て防御力だけが二桁、能力(スキル)にある耐性だけが高い。

あのクソ女共に散々やられたのが影響しているのかと思ったが深く考えればクソ女共を思い出して苛立つから止めた。

「というか、テイマーってアレだよな? ゲームで出てくるモンスターを使役するやつだよな?」

あまりゲームはしたことがないから曖昧な知識になるが、間違いはないだろう。

と、いうことはこの鞭はその為の道具? 異世界特典的なもの?

「あー、クソ。転生するならその手の漫画をもっと読んどけばよかった………………………」

今更ながら嘆くももう遅いのはわかっているも、言わずにはいられない。

「ん? フラジェウィップ? この鞭の名前か?」

鞭を見たらなんとなくその名前が浮かび上がった。

「もしかしてこの鑑定のおかげか? でも、名前がわかったところで使い方がわからないと意味がない」

鞭の名前はわかったところで意味はない。

どうするか、と黄昏ていると腹の虫が鳴った。

「………………………………どういう状況でも腹は減るもんだな」

取りあえず、食材の調達、飲み水の確保、寝床。この三つを手に入れるところから始めるか。

鞭もないよりかはマシだろう。

生きる為にもまずは行動あるのみ。

威嚇用に鞭を持って周囲を警戒しながら歩く。獣道を裸足で歩いているが特に痛みはない。苦痛耐性のおかげかもしれないが、その耐性が高いのがあのクソ家族のおかげと思うのは癪だ。

「しかし、ここってどこなんだ? せめて人が住んでいる所さえ見つかればまだなんとかなるんだけど………………………」

正直、異世界に転生したとは勘弁して欲しい。せっかくあの家から解放され、待望の一人暮らしが待っていたのに、クソ、思い出しただけでムカムカする。あのろくでなしのクソ姉貴め。

「ん? あれって人か………………………?」

木にもたれ掛かっているように座っている人影らしきものが見えて俺はその人に駆け寄る。

「すみません。少しお話しても―――――!」

声をかけるも俺は言葉を失った。

なんせ、声をかけたのが白骨化した遺体だったからだ。

もう死後何年も経っている状態で放置されている遺体に俺は失礼ながらもその遺体が身に着けているものを物色する。

骨格からして成人男性ぐらいだろう。身に着けている防具も腰にある剣もどう見ても自分が知っているものではない。少なくともここが日本ではないことだけはわかった。

いや、認めたくはないが、やっぱり異世界かもしれない。

だって防具や剣を持って森の中で人が死んでいるのなんて自分が知っている世界には存在しない。

「ああ、やっぱ、異世界転生だわ……………これ…………マジか………………………」

さよなら日本。こんにちは異世界。

これからは異世界で新しい人生を始めます。

「ま、今はそんなこと考えている場合じゃねえか」

俺は遺体となっている男性に手を合わせる。

「すみません。俺が今日を生きる為に貴方の剣と防具を貰います」

男性が身に着けている防具と剣を頂戴して遺体は埋葬しておく。

どうか安らかにお休みください。

「よし」

鎧を装備して、剣を持って進む。

鎧を着ている分、さきほどよりも安心感がある。

今ならどんな魔物だろうとモンスターだろうと負ける気がしない。なんて。

その時、俺はどうして自分からフラグを立てるなんて馬鹿なことをしたのだろうかと後悔する。

盛大にフラグを立てた俺の前に草陰からソレは現れた。

黒い体毛を持つ大型の狼に。

「グルルルルル」

唸り声を上げる狼。体高1(メートル)はある大型の狼に睨まれて俺は剣を強く持つ。

異世界に転生して、早速のバトル。剣を持つ手から汗が止まらない。

「バウ!!」

「うわぁ!」

飛びかかってくる狼に俺は咄嗟に横に避けて回避するも、汗で滑って剣を手放してしまった。

「やべっ!」

俺は急いで剣を拾おうとするも、この狼は賢く、剣を拾わせてくれなかった。

仕方がなく俺は鞭を手にする。

鞭なんて使ったことがないから振れるかわからないから使いたくはなかったが、使うしかない。

「そりゃ!」

鞭を振るう。だが、初めて振った鞭は弱弱しく、打つよりも当てるに近い。

そのあまりにも弱弱しさに狼は憐れむかのようにしょうがなく当たってあげた感が半端ない。

「この、この、この!」

何度も振るうも狼は避ける素振りすらしない。

もう気が済むまで当たってあげよう。狼の目がそう語っているように見えてしまう。

「なんだよ! しょうがねえだろう!? 鞭なんて振るったことねえんだから!!」

思わず俺は叫んだ。

だって仕方がないじゃん。竹刀や木刀なら何度か振るったことはあっても鞭なんて振るう人ってそういう趣味の人でないと振らないじゃんか!?

「バウ?」

もういい? みたいに確認を取ってくる狼に俺はもう最後の抵抗のように我武者羅に鞭を振り続ける。

せっかく転生して生き返ったのに転生早々死んでたまるか!?

必死の抵抗に狼は鞭が当たりながらも平然と突っ込んでくる。その鋭い牙がぞろりと並んだ口を大きく開けながら飛びかかってくる狼に俺は二度目の死を覚悟して目を閉じた。

…………………………。

…………………………………………。

………………………………………………………………………あれ?

何時まで経っても痛みを感じない俺は目を開けるとつい今しがた迄俺の事を憐れむ餌のように見ていた狼が忠犬のように俺の前で座っていた。

「え? ええ?」

何がどうなったのかわからない俺にアイコンが点滅しているのが見えてアイコンに触れると――



ラフェルウルフの使役に成功しました。



ステイタス画面に使役成功の文字が出ていた。

その下に狼――ラフェルウルフのレベルと能力(スキル)が記されている。

Lv.23。

能力(スキル):幻影4/10。

「俺より高い………………………」

俺よりもレベルが高いこの狼に目を向けると愛犬の如く愛嬌あるつぶらな瞳で俺を見てくる。

そっと手を伸ばして頭を撫でると目を細める。

やばい、可愛いぞ。

「よし、ラフェルウルフ………………いや、ロウ! 獲物を狩ってこい!」

「バウ!」

命令してみたら獲物を探しにどこかに走っていく。

「にしてもこれってテイムしたってことでいいんだよな? 鞭で叩いただけなのにテイムできるものなのか? ゲームだと倒してからテイムできるはずだけど………………………」

テイムの成功条件。それが運よく成功したおかげでロウをテイムすることができた。

その条件はとりあえず鞭をいっぱい叩くことを仮定にして考えておこう。

「まぁ、レベルが23のモンスターをテイムできたのは運がよかったなぁ………………………」

これからよほどでない限りは大丈夫だろう。

とりあえずこれからの課題の一つとして鞭をまともに振れるようになることから始めよう。


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