目覚めのちょっと前
伏線多すぎて回収できるか心配。
※この話はベルフェが目覚める一か月前後くらいです。誤差は結構あります。ご容赦ください。
『???』視点
「あっ、忘れてた。そろそろ『怠惰』が覚醒する時期だよ」
私はこの言葉を聞いた時、耳を疑った。
「ま、待て。貴様は今...【七大罪】の『怠惰』が目覚めると言ったのか?」
「ああ、言った」
「本当に『怠惰』か?『平』でもなく?」
「なんでわざわざ平氏を起こすんだよ。アイツら一族みんな永眠してるだろ」
「何を根拠に言っているんだ!?」
「何をって...『予知』?」
「なんで疑問系なのだ...!!」
でも、確かにコイツは『予知』の魔法を使用できる私が知る限りでは唯一の人間だ。
予知の精度もいい、そして何よりコイツは嘘をつかない。...いや。私含め嘘はつけないからな。
「しかし...困ったな。僕、あの一件以来『怠惰』と仲悪いんだよね」
「だから何度も言っただろう!間違っても【七大罪】には手を出すなと!!」
「しょうがなくない?だって、あの時はこっちの世界に来て舞い上がってたんだからさ」
この馬鹿は...本当に口の減らない男だ。
「...はぁ、もう私は貴様に付き合いきれん。勝手にしろ」
「そんなこと言わないでさぁ...もっと人生楽しまないと、損だよ?」
そう言いつつ私の尻に手を伸ばしてくる。
それを振り払い、奴を睨みながら返答する。
「ハッ。生憎私は...もう、人間ではないからな。人生なんぞ知ったことか。...言っておくが貴様もだぞ?」
「またまた~屁理屈こねちゃって。ほら、僕の目を見てごらん?人生楽しすぎてキラキラしてるでしょ?」
その目はひどく濁り、見ているだけで不安になる。そんな目だった。
「ハイライトのない目で言われてもな。それに...いや、なんでもない」
「なに、僕の知性が宿った凛々しい目にあてられたかい?」
「確かに宿ってるな、痴性が」
「やっぱりね!僕の目には知性が宿ってるんだ!」
「...字が違うのだが........まあいい、用件はこれだけか?なら帰らせてもらいたいのだが」
「いやいや、しっかりと対策をした上での召集でだよ」
彼はどこまでも軽薄な声で話を続ける。
「...それは『怠惰』の対策か。それとも【七大罪】への対策か。どっちだ?」
「う~ん...どっちもかな?」
そんなことを言い出す彼に、思わず私は鼻で笑ってしまう。
「フッ...」
昔、【七大罪】の存在を消滅させろ、と言われて突然召喚された。私とコイツ、あと数人でだ。日常から非日常へ。環境、状況、状態...何もかもが変わってしまった。
唯一変わらなかったのは性別だけだ。
まぁ、色々あって今は私と奴の二人だけだが。
慣れない生物を“殺す”感覚。それは平和な世界から来た私達の心を大いに苛み、蝕んだ。
もっとも、400年近くたった今では何も感じなくなった。
...その感覚が一番怖いことを、まだ二人は知らない。
「出来たなら、もうとっくにしてるさ...」
「いやー。それがね、出来るんだよ。出来ちゃうんだよ」
「...一応聞いておこうか」
訝しげな目で奴を見る。
怪しい。いったい、何を企んでいるのだろうか...
「『異世界召喚』さ!」
私は気がついたら奴を殴っていた。...が、片手で軽々と止められてしまう。
「貴様っ!貴様という奴は...どれ程腐っているのだッ!!」
「...これはどういうつもりかな?」
「私たちのような人間は、増やしてはならない。こんな思いをするのは、私たちだけで充分だ!」
私が悪かった。ああ、これは私が悪いんだ。私がコイツのことを野放しにしておいたから。
質が悪いのはアイツにはそれを実行できる力があることだ。
「はぁ...やっぱり君には理解されないか...や、まあ分かってたんだけどね?」
「ここで殺してやる!お前は...お前だけは...!!」
「もういいよ。...なんか冷めた」
奴は私を凍えるような視線を向ける。それは...かつて仲間を殺した時と同じ顔だ。
これは...ヤバイ!
「...もういいよ。死んじゃえよ」
「死んで...たまるかぁぁぁぁ!!」
奴の腕から黄色い閃光が迸る。
「第一門『勇気』解除。第二門『正義』解除。......最終門『希望』解除」
「くそ!『イージスの盾』!!」
私の腕から紫に輝く巨大な盾が顕在化する。
だが...これだけでは耐えられないのは明白だ。私は...ここで死ぬのか?ダメだ。まだ死ねない。くそ、チカラが足りない!
「聖剣───」
荒ぶる閃光が一つに纏まり、剣の形を作る。
「エクス───」
暴力的なまでの光が、そこにあった。
「カリバァァァァーーー!!!」
形容するなら...そう、まるで隕石だ。
災厄が...ちっぽけな私に降り注がれて───
「そこまでだ。人間風情が...我の前で図に乗るな」
人がそこに立っていた。
逆立つ金髪。見上げるような背丈。筋肉質な背中が私に向いていた。...あれ?私、守られてる?
「ふん、他愛ない。...弾けろ『傲慢な睥睨』」
瞬間、視界で二つの大きな力同士がぶつかり合い、爆ぜる。
「よう...無事か?小娘よ」
「ッ!!....え、えぇ。なんとかね」
そこには紛れもない災厄の姿があった。
「【七大罪】...『傲慢』ね?貴方...チカラを奪われたんじゃなかったの?」
「...我を縛るのなら神でも連れてくるんだな」
苦い顔をしてそう言う『傲慢』。
「ケホッ、ケホッ...ちっ、【七大罪】かよ。もうバレたのか」
「あぁ、覚悟はいいか。量産型よぉ?」
第二ラウンドが...始まる。
すみません。そろそろテスト期間に入りそうなので、一週間くらい更新がストップします。
楽しみにしてくださる方がいましたら、本当に申し訳ないです。




