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犬神憑きの末裔  作者: 山田健一郎
8/20

変貌

翌日俺とリンダはランチの仕込みをしていた。

ネパールへは五日後に飛ぶ。ネパール滞在は一週間を予定している。

店の営業とソーマの仕込みのためにちと忙しいがしょうがない。

俺がいない間はリンダともう一人臨時のウエイトレスを雇う。

この間吸血鬼を封印してルーマニアのトランシルヴァニアに送ったが、吸血鬼にされてしまった日本人の女性二人はこのビルの一階で働いている。

一人は旅行代理店、もう一人は不動産会社で働き昼間はビルからは出ない。日光を浴びると灰になってしまうからだ。二人ともビルの2階に住んでいる。もう家には戻れない。

吸血鬼から人間に戻す方法はまだ見つからない。そのうちの一人にリンダと共に店を手伝ってもらう予定だ。

明日から研修を兼ねてうちの店でバイトしてもらうつもりだ。

リンダは厨房の奥で大きな鍋でカレーを煮込んでいた。カレーが焦げ付かないように、弱火で常に鍋の底を木のへらでかき回している。

「ねぇ地獄の釜の蓋が開くって話、本当なのかしら?」

リンダが真面目な表情で聞いてきた。

「うーんこの間占術が得意な女陰陽師に聞いたところ、あと100年後くらいじゃないかと言っていたぞ。

100年後は俺は死んでるし・・・もうどうでもいいか・・・」

「何言ってるのよ!!100年後はまだ私はピンピンしてるわよ!!このかわいいリンダちゃんがどうなってもいいの!!」

リンダが目に涙を浮かべて本気で怒っていた。

「わかったよ。俺がなんとかする」

「健ちゃんだーい好きー!!」

リンダが抱きついてきた。

「店の中で健ちゃんはやめなさい」

店の電話が鳴った。オーナーからだった。

「犬神さん!2階の205号室の佐藤さんの様子が尋常じゃないらしいので、今すぐ様子を見てきて貰えませんか?」

俺は電話を切りカウンターの内側に常に用意してある、ソーマとヴァジュラを取り出しビルの2階に走った。

リンダも走ってついて来る。

「私も行く!いざとなったら私の魔法が役にたつわよ!」

リンダは耳がいいので電話の内容は丸聞こえだったようだ。


俺たちは程なくして佐藤さんの部屋の前に着いた。

ドアノブに手を掛けたが鍵は掛かっていない。ドアを開けて中に入った。

中に入ると右手にキッチン、左手にバスルーム、奥がリビング、俺の部屋と同じ間取りだ。

リビングのドアを開けた。

奥にベッドがあり佐藤さんが裸で腰かけていた。

いや それは すでに 佐藤さん では 無い

異形の者が座っていた。

頭にはねじくれた角が何本も生えている。

どれも皮膚を無理やり突き破って出てきたらしく、血にまみれている。見る間に新しい角が皮膚を破り血を滴らせながらゆっくりと突き出してくる。

目が三つある。口は顔だけで四つ。腕、胸、腹、足、いたるところにいびつな顎が口が開いている。

形も大きさも不揃いで皆ガチガチと歯を打ち鳴らしながら血の涎をたらしている。

身体は時折ビクビクと痙攣してどの口からも呪詛のような呻きが漏れてくる。


俺たちに気づいたようだ。

その異形の者は立ち上がりゆっくりとこちらに近づいて来る。

リンダが両手を突き出した。

「エルルーカ!!」

俺たちの前に見えない壁ができた。一種の結界である。大抵の者はこちらに近づく事は出来ない。


が、その異形の者はそのシールドを徐々に突き抜けてこちらに向かってくる。ありえない。

俺はヴァジュラを握り真言を唱えた。

「オン、インドラヤ、ソワカ!!」

ヴァジュラから雷光が走り異形の者を貫いた。

だが異形の者の動きは止まらない。その手がリンダに伸びていく。

「危ない!!」

俺はヴァジュラの先端で異形の者の胸を貫いた。先端の槍の刃が一回り大きくなり刃が伸び背中から突き出した。

異形の者は崩れ落ち動かなくなった。


「リンダ!大丈夫か!」

リンダは目を見開いて震えている。

「健ちゃん!!見て!!」

俺は振り返った。異形の者の死体の口から大きな黒いムカデが這い出てきていた。こちらを凝視している。

ムカデが飛びかかって来た!

俺はムカデをヴァジュラで叩き落し頭を踵で踏みつぶした。

ムカデは動かなくなった。


俺は異形の者の死体を調べた。背中を見て愕然とした。そこには六芒星・・・ソロモンの紋章が赤い血の色で浮かんでいたからだ。

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