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犬神憑きの末裔  作者: 山田健一郎
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遠野

俺の肉体は今、東京の自室の床で結跏趺坐で座禅をしている。

俺の精神は今、一部を除いてこの肉体にある。

俺の魂の一部は飯綱(管狐)と共にある。飯綱は今俺の式神として宙を飛んで岩手の遠野に向かっている。見た目は小さな狐だ。だが妖怪である。式神として使役出来る。

つまり飯綱の意識を乗っ取り遠隔操作で空を飛んでいる。飛行速度はかなり速い。

1時間程で遠野に着いた。森の奥から異様な妖気が漂っている。俺は森の中に降りて行った。

森の中を飛んでいるといきなり目前にでかい猿が現れた。身体の大きさは7メートル位だ。目が三つある。

俺は大猿に捕まれていた。強大な力だ。身動きが出来ない。その三つの目で俺を見つめ匂いを嗅いでいる。

「珍しい匂いをしているのう。良い香りじゃ。美味そうじゃ。美味そうじゃ。食らおうぞ。食らおうぞ」


俺は食われた。噛み砕かれ、咀嚼され、飲み込まれた。飯綱の身体はあっと言う間に大猿に吸収された。

大猿の意識が俺に流れ込んできた。ハヌマーン?いや違う。意識の中はほぼ食欲のみで覆われている。

大猿が俺に意識を飛ばしてくる。何か異形の者の姿が見える。頭が三つ?

「食われてもなお意識があるとは天晴れじゃ。魂も食ろうてやる」

俺の魂は食われた。


我に帰った。俺は今自室にいる。魂の一部が食われたがソーマを飲めばほどなく回復する。

だがこの魂を熱湯で茹でられるかのような焦燥感は非常に不快だ。ソーマを飲み道灌に連絡する準備を始めた。

筆と墨汁と人型に切り抜いた和紙を用意した。

窓を開け左手の手の平の上に和紙を置き、筆で犬神と書いて息を吹きかける。

「急急如律令!!」

式神は道灌の元へ飛んで行った。

俺はPCを起動しインターネットで大猿の噂、ニュースを調べたが何も見つからなっかった。どうしたものか思案していると窓から道灌が飛んで入って来た。身長10cm程だ。道灌が飛ばした式神だ。

テーブルの上に立った小さいおっさんが喋り始めた。

「なぁ犬神の、わしは高野山や遠野に行って調べて来る。おぬしはネパールのチベット仏教の聖地ボダナートの寺院に行ってくれ。わしゃ海外は好かん」

そう言うと道灌の姿が消え、後には人型の和紙があるだけだった。表面には道灌と筆で書かれていた。

相変わらず自分勝手な奴だ。俺はため息をつきながらネパール行の航空券の値段を調べだした。


夜にビルのオーナーのスミスさんから電話があった。

悪魔崇拝集団「ソロモンの紋章」が鍵を握っていそうだと。

俺は大猿に魂を食われる瞬間に見た異形の者を思い出した。

それは猫の頭、人の頭、ヒキガエルの頭と蜘蛛の身体を持つソロモンが使役していた悪魔の一人だ。

俺は背筋が震えた。


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