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犬神憑きの末裔  作者: 山田健一郎
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10年前の出来事

   ___10年前、俺は20歳で大学2年だった。___


俺と父さんの二人で北海道のある山に来た。

「父さん今回の相手はヒグマなんだろ?猟師に鉄砲で撃ち殺させればいいじゃないか。」

「それはもうやった。だがな、心臓に何発も撃ち込んだがそのヒグマは死ななかったそうだ。5人がかりで挑んだが4人殺された。つまりそのヒグマはすでに死んでいるのに猟師を次々と食い殺した」

「えーーーじゃあゾンビヒグマってこと?」

「そうだ、もうすぐその現場にたどり着く。用心しろ」

「わかったよ父さん」

俺たちは現場にたどり着いた。殺された人たちの遺体はもうきれいに片付けられていたが、異様な雰囲気が漂っている。あきらかに近くに異形の者、人外の者がいる。遠くから異様な気配が近づいてくる。普通の人間にはわからないだろう。俺と父さんは陰陽師だ、人外の者の気配はすぐにわかる。俺はまだ駆け出し、というかあまり強い魔物と戦った事が無い。俺はそわそわしたが父さんに悟られたくなくて平静を装っていた。

森の中を邪悪な気配が近づいてくる。遠くに黒い毛の塊が現れた。ヒグマだ!!

だんだんと近づいて来る。腐臭が漂ってきた。いきなりヒグマが突進してきた!!

父さんが叫んだ。

「木の陰に隠れろ!!」

俺は足がすくんで動けない。あまりの恐怖に思考停止に落ちてしまった。ヒグマが目前に迫った!!

「危ない!!」

父さんが俺を突き飛ばした。ヒグマのでかい前足が父さんの顔面に振り下ろされた。父さんは巨大な爪に引き裂かれて倒れた。俺はガタガタと震えているだけだ。身体が動かない。ヒグマがこちらを向いた。

ヒグマが俺に近づいて来る。俺は動けなかった。ヒグマは大きな口を開け俺に食らいついてきた。

その瞬間俺の肩から白い狼の頭が飛び出した!!狼ではない、これが父さんから聞いていた狗神か!

狗神はヒグマの頭に食らいつき頭を噛み潰した。頭を失ったヒグマは倒れ動かなくなった。

父さんは倒れて虫の息だ。助けなくては!!俺は父さんの傍にしゃがみこんだ。

いきなり狗神が首をのばし父さんの腹に食らいついた。

「やめろ!!」

だが狗神は止めなかった。父さんの腹に顔を突っ込みはらわたを食い始めた。

俺の口の中に血の匂いが溢れた。そして狗神が咀嚼している肉や内臓の味噛んだ感触がそのまま俺に伝わってくる。俺は歓喜していた。人間の肉がこれほど美味いとは!!俺は血と肉の味に酔いしれた。


どれくらい時間が経っただろうか。ふと我に返ると狗神の姿は消えていた。目の前には食い散らかされた肉片があった。俺は吐いた。口の中から父さんの血と肉と内臓が吐き出された。俺は泣きながら吐き続けた。

ちくしょう!!ちくしょう!!ちくしょう!!ちくしょう!!ちくしょう!!

俺は生きている父さんを食べた!!!俺が父さんを殺した!!!!!!

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


生まれてくるんじゃなかった


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