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犬神憑きの末裔  作者: 山田健一郎
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四国 剣山

俺達は四国の高知剣山に来た。

スミスさん、リンダ、俺、道灌、神崎、松田さんの6人だ。

すでにスミスさんが手配した人外の者達の別動隊がたどり着いているはずだ。

剣山の山頂付近にある鶴岩と亀岩の近くに地下へと続く洞窟が見つかっている。

強力な結界が張られているために普通の人間には入る事が出来ない。

険しい山道を登り続け洞窟の入り口にたどり着いた。

結界の封印を解き俺たちは洞窟の中へ入っていった。

中に入りしばらく歩くと明かりが見えた。

どうやら焚火のようだ。

近づいてみると焚火を囲んで3匹の鬼達が酒盛りをしていた。

赤鬼、青鬼、黒鬼だ。


赤鬼が立ち上がりこちらを睨みつけた。

「なんだお前らは?エルフと人間か・・・・・まぁいい・・・死ね」

赤鬼の目が妖しく光った。

突然地面がグラグラと揺れ出した。

地震か?

「キャーー!!」

リンダが大きな声で叫んでいる。

いきなり地面が砂のように崩れ去り俺達は砂の海に飲み込まれていった・・・・




道灌が洞窟の中で一人で立っている。

「誰もいないのか?」

背後に殺気を感じた道灌は懐に手を入れ暗器を左手で掴むと同時に振り返った。

目前に青い鬼が立っている。

間髪を入れずに暗器を鬼の顔面に向けて突いた。

鬼は右手をひょいと上げて手の平で道灌の暗器を受けた。

鬼の手に暗器が突き刺さり道灌の指が鬼の手の平に触れた。

「くっくっくっく 人間よ、わしの手に触れたな。もうお前は終わりだ。わしの名は腐鬼。

わしに触れればそこから全身が腐り死ぬ」

「そうかよ」

道灌が懐から2本の長い針を出し鬼の両目に突き刺した。

「ゴウ!!」

鬼が呻いて前屈みになった。

道灌は背後に回り込み鬼の両耳の中に針を打ち込み三半規管を破壊した。

脊髄に針を打ち込み、背中から心臓を針で串刺しにする。

「ふん、たわいもない」


道灌の左手の指が紫色に変色している。

中指が腐ってぽとりと地面に落ちた。

道灌はしゃがみ地面に左手をつけた。

懐から鉈を取り出すと自分の左手の手首に向けて振り下ろす。

道灌の左手が切り落とされた。





俺は洞窟の中を1人で歩いていた。

洞窟の壁や地面が薄く光っている。

皆はどこに行った?

地面が崩れて落ちたような気がしたが・・・・・記憶が曖昧だ。

なぜ俺1人だ?

しばらく歩くと少女がしゃがみ込んで泣いている。

俺は近づいて声を掛けた。

「こんなところでどうしたんだい?」

少女が顔を上げた。

俺は息が止まりそうになった。

目の前に中学校の同級生の伊藤はるみが当時の姿のままでいた。


馬鹿な!!ありえない!!

あの子は死んだ・・・・・俺の前で。


俺はあの時、学校の図書室で本を借りて帰宅しようとしていた。

中学3年生だった。

普段から他の人が見えないものが見える俺は、他人から見れば挙動不審、どこかおかしい、変わり者、そおいう存在だった。

人付き合いを避けるようになり本ばかり読んでいた。

学校の図書室でよくクラスメートの伊藤はるみに出くわした。

彼女はとても頭が良く美人でスタイルもよく完璧な存在だった。

だが、なぜか男子とは話をしなかった。父親の教育方針だったと思う。




学校から自宅の近くにある林の中で俺は見てしまった。

彼女が食人鬼に食われるところを。


家に帰る時に道を外れ林を突っ切ると帰宅時間を短縮できた。

俺はその日も林の中に入っていった。


異様な雰囲気と血の匂いを感じた俺は家とは逆の方向に進んでいた。

ぴちゃぴちゃ、ぐちゅぐちゅという音が聞こえる。


そこに彼女が横たわっていた。

食人鬼が彼女の腹に口をつっこんで内臓を食っている。


彼女はまだ生きていた。

目と目が合った。

彼女の口が動いた。

「 た す け て 」


俺は恐怖で走って逃げた。

俺は彼女を見殺しにした!!!!!


俺はすっかり忘れていた・・・・・

いや記憶を自分で封印していたのだろう。


俺は俺は・・・・・俺は最低だ・・・・・・・








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