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犬神憑きの末裔  作者: 山田健一郎
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鵺(ぬえ)

夜の森を道灌が歩いている。

鷹神が示した先に向かっている。

遥か前方に何者かが佇む気配がする。


色不異空空不異色 色即是空空即是色 受想行識亦復如是・・・

般若心経を唱える声が聞こえてくる。


道灌の数十メートル先に黒装束の男三人が地面に座り経を唱えている。

その男たちの後方、森の西の方角から巨大な魔物の気配が近づいて来る。


「ふん、そういう事かよ。しゃらくさい」

道灌は地面にどかりと座りサンスクリット語のマントラを唱えだした。

「ノウボウ・アカーシャキャリバヤ・オン・アリキャ・マリボリ・ソワカ・・・・・・・」


森の西から巨大な猿が現れた。7メートルほどの大きさだ。目が三つある。

恐ろしい妖気を吹き出しながら道灌のいる方角に向かって歩いていく。


森の東の方向から新たな魔獣の気配がやって来た。

道灌のすぐそばにそれは現れた。

ぬえである。

猿の顔、虎の胴体と手足、蛇の尾を持ち背中に翼が生えている。身体の大きさは3メートル程だ。

鷹神が化身した姿である。

道灌と忍者たちとの距離は30メートル程であろうか。

その中間地点で大猿と鵺との死闘が始まった。


鵺が翼で宙を舞いながら紅蓮の炎を口から吐き出しつつ大猿に飛びかかった!

大猿の顔が焼けただれたが、怯まずに鵺に襲い掛かった。

両手で鵺の翼を掴むと腹に食らいつきその皮膚を食い破った。

そして腹の中に顔を突っ込みはらわたを食らいだした。

鵺は鋭いかぎ爪で大猿の背中を抑え炎で猿の背を焼いていく。




「リンダ!!急げ!!」

俺とリンダは道灌の元に走りたどり着いた。

「健ちゃん!前方30メートルに忍者がしゃがみ込んで大猿を操っているわ!!」

「よくこんな暗闇の中で見えるな。さすがエルフの王女だ。道灌を頼む。俺は忍者たちを制圧してくる」

リンダが右手を道灌に向けて魔法を唱えた。

「サンクチュアリガーディアン!!」

道灌が精霊の加護に包まれた。


俺は魔獣どもの真横を駆け抜け忍者の元に走った。

3人の忍者の真ん中の男の顔面に飛び蹴りをくらわし、左の男の人中に突きを入れ、右の男の右こめかみに左フックを叩き込んだ。

制圧完了。


魔獣達も動きを止めていた。どうやら相打らしい。どちらも息絶えたようだ。


道灌が呆然と立ち尽くしていた。

「この鵺、作り上げるのに10年以上費やしたのだ・・・・無に帰した・・・・

この償いは必ずしてもらおう」


道灌は男たちを縛り上げ顔を覆ていた頭巾を剥がした。

そして懐から手ぬぐいを取り出した。その中には細くて長い針が多数くるまれていた。


道灌は男の頭を触り頭蓋骨の継ぎ目から針を脳の中に刺していく。

ゆっくりゆっくり深く深く刺していく。

1本、もう1本さらに1本・・・合計5本差した。

その針を1本ずつ、くりくりと動かしていく。

そのたびに男の両目が別々に右に左に動いて口をぱくぱくさせている。

時折身体がビクンビクンと痙攣している。


うむさすが道灌。気持ち悪い。


「うぇー気持ちわーるーいー。私ちょっと向こうに行ってるね。健ちゃんはここにいてね」

「わかった。あまり遠くには行くな。何かあったらテレパシーで俺を呼べよ」

「うん」


道灌の尋問が始まった。

まぁあまり気持ちいい物では無いが、大事な事を聞き漏らす分けにはいかない。

10分程過ぎただろうか。聞きたいことは終わった。

死体の処理は道灌に任せる事にした。

なんでも今作ってる人造人間の材料にいくつかのパーツが必要との事だ。

気持ち悪いから深くは聞かないようにした。


(健ちゃん!!助けて!!!)

リンダの声が頭の中に響いた!!

俺は走った!!

リンダ!!リンダ!!

間に合ってくれ!!


俺はリンダの元にたどり着いた。

リンダは切り株に座っていた。

「大丈夫か!!リンダ!!」

「健ちゃん見て!!孤独のムカデよ!!」

「なんだそれ?孤独じゃない、蟲毒だ。それはただのムカデだ。森の中では珍しい物では無い」


「・・・・・・・ごめんなさい・・」

「なぁリンダ」

「何?」

「おしっこは終わったのか?」

「健ちゃんのばか!!」

俺はリンダにひっぱたかれた。






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