一話
宜しくお願いします
僕はポテトを食べながら部屋の中でぐったりとしていた。
テレビは天気予報を流していた。
机には大量のデッサンやキャラクターの設定資料が置いてある。
滝本奏、18歳 美大に入って一年目、夢は漫画家。
昨日、とある出版社に持ち込みにいった。
持ち込みに行けば編集者さんに直接、漫画の原稿を見てもらうことができる。
出版社の前に立つと、急に不安になり息切れをおこし始めた。
「おい、お前滝本奏やろ?早くこんかい」
金髪の厳ついたくましい男性が目の前に立っていた。
「えと、すみません、どうして僕の名前なんかを・・・?」
「とりあえず中に入れ、月刊シャイニングの真木川や」
出版社に入ると想像以上に広く床はピカピカに磨かれていた。
「滝本、ここの床はどうして綺麗なんやと思う?」
「え・・・」
「答えは清掃のおばちゃんが朝はようから、正確には朝4時から一生懸命掃除してくれてるからや」
僕の漫画は多分、清掃のおばちゃんには勝てない。
わかっている、勝ち負けの話じゃない。
もっと根本的に大事な、とても大事な話を真木川さんはしてくれたのだ。
椅子に座ると真木川さんに原稿を手渡した。
一枚、一枚丁寧に見てくれた。 それだけで救われた気がした。
ありがとうございます