王都へ
チュンチュン
朝日が空を明るくする時間
ブン、ブン、ブン
ロレンスは自身の木剣で素振りをしていた。幼き頃、師匠に無理矢理起こされ剣術の特訓と称して素振りと模擬戦を早朝からしてきた
素振りが終わり顔を洗いに井戸に向かった
顔を洗っている最中
「ん?あんたかいな」
女亭主が声を掛けてきた
「ども、」
ロレンスは会釈で挨拶をする
「朝早くから特訓かい?精がでるねぇ」
「毎日していることなので大したことじゃないですよ」
「あら、そうかい」
そう言って水を汲む女亭主
「あと半刻〔30分〕ぐらいしたら朝食の準備が出来るから早く着替えを済ますんだね」
「あ、はいわかりました」
そして半刻の間に服を着替え朝食を済ませる
「昨日は済まなかった」
そう言って土下座をするロイに驚くロレンス
「いきなりどうした?」
「昨日無理に宴に参加させただろう?それを知ったかみさんに激怒されたんだ」
「あ、ああなるほど……昨日の悲鳴は」
「そういうことだ」
2人の間で会話が止まる
「……湿った話はやめて、お前はどうするんだ?」
「どうするとは?」
「お前、旅に出てるんだろ?ああ、このことは知合いの門番に聞いたんだ。当てはあるのか?」
「当てか……」
そういや決めてなかったな、師匠の日記に王都の話が書いてあったしな
「王都ってどんなところか知ってるか」
「王都か?あそこな、あそこはとりあえずデカイ。そんでもってめんどくさい俺は一応指名依頼が来るランクにあるんだが貴族様の態度が気に食わないだわ。貴族に向かってその態度はなんだ!とかこれだから下賤な冒険者はとかな。逆に品揃えは抜群だな安い武器から一級品の武器まで揃えられるしな」
行くならオススメはするぜ、とロイは継ぎ足す。そこである疑問が思い浮かぶ
「じゃあ、なんでロイはここにいるんだ?言っちゃ悪いがここは田舎だろ?」
そう言い切るとロイはプッと笑い出す
「ハハ、田舎か。それは認めるぜ、ここにいる理由は簡単さここがこれの故郷だからな。一流の冒険者になったら戻って来るって決めてたからな」
バンバンと肩をロレンスの肩を叩き
「そんな理由だからこの街にいるんだ。まぁ後は向こうよりここの方が穏やかだからな。俺はそんな理由だが他は知らねーけどな」
ちょっと待っててくれとロイは言い渡しその場を離れる。戻ってきた時には何か紙を持っていた
「王都までの地図だ持っていけ、俺はもう使わないしな」
そう言って地図をロレンスに渡した
「いいのか?」
「ああ、それにもう道は覚えたしな」
「そうか、ならありがたく」
ロレンスは地図を持っていたバッグに入れる
朝食を摂り終え出発の準備をする、そこに女亭主が訪ねて来る
「あんた、もう出るみたいだね」
「ええ、まあ」
「ならこれを持って行きな」
そう言って小さい箱を渡す、中を見てみるとサンドイッチが入っていた
「あの、これは?」
「これはうちの主人が迷惑かけたお詫びさ、箱はもらってて構わない。どうせ主人の稼ぎからまた集まるし」
くく、と怖い笑い方をしている女亭主に後ずさるロレンス
「そう、怖がらなくてもいいだろうに。まあ、行ってきなこの街にまた、戻ってきたらうちにまた来な」
「いやいや、この街の宿ってここしかないでしょ」
「それはそうだったね、一本取られた」
笑いながらロレンスを見送る女亭主
「はぁ、全くあんた!」
ロレンスが宿を出て数分後のこと
「な、なんだ!」
「あの子にちゃんとお詫びしたんだろうね?」
「あ、ああしたさ!」
「そうかいならいいさ、あとあの子にあげた箱のぶんのお金もらうからね」
「な、なんだと」
「当たり前だよ!あんたが昨日余計なことしなかったらあの子に迷惑がかからなかったんだよ」
「うぐ、……はい」
「よろしい」
以上女性に尻を敷かれているロイの話でした