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第10話 真一郎と盗賊

※ご注意

残酷なシーンがあります


-----異世界生活を存分に楽しむ。そんな風に考えていた時期が俺にもありました。

シンは意気揚々と洞窟を出発した過去の自分を振り返る。




―出発から2日。


クーネの飛行魔術で空を飛んでいくことも出来た二人だったが、余計な混乱を起こしそうなことは避けるべきと判断したシンは、素直に歩いていくことにした。


しかし歩きと言っても、そこは片やゴーレム、片やドラゴンだ。

ちょっとやそっとで疲労などしないし、真竜種もゴーレムと同じように魔素で生きているため、食事も、睡眠も基本不要だ。


初めてそれを聞いた時に、ドラゴンもゴーレムと同じ仕組みなのかとシンは驚いた。

しかしクーネによると、それはドラゴンの中でも真竜種だけで、且つゴーレムがそれを真似して作られているだけらしい。

しかも、ゴーレムの魔素融合炉は真竜種の心臓である“竜核”の劣化コピーに過ぎないとのことだった。


そんな優劣の差は有れど、結局のところ休息が不要の二人は、馬車以上のスピードで行程をどんどんと消化していく。



この2日間で広大な山と森を抜けた二人は、グラウコム山脈から一番近い街道まで出てきていた。

グラウコム山脈を挟む二つの国、ボーニス共和国とバルノッテ王国を結ぶ街道。


しかし、そんな街道ではあるが、昼間にも関わらず人は見当たらない。

まだまだ神域であるグラウコム山脈に近い場所だ。余程の理由がないと人はここまでは来ないのであろう。


実際、街道もあまり人が通らないことを証明するかの如く、荒れ果てていた。

そんな街道を二人は黙々と歩く。


最初の頃は、初めて見る動物や植物を見て、シンがクーネに頻りに尋ねる場面があった。

あれは何だ?名前は何だ?と。


しかし、クーネの答えは大体同じだった。

「・・・知らないわよ」


考えてみれば、クーネは筋金入りの引きこもりである。

そういったことに詳しくないのも当然ではあった。


また、普通の動植物がいる一方で、この世界には当然のように魔物も存在するのだが、シンはこの2日間一度も魔物らしきものを見てはいなかった。


シンがクーネにその理由を尋ねると、

「お母様の山のお膝元で活動できる魔物がいたら、尊敬に値するわね」

という答えが返ってきた。


やはりリディルという存在は、かなりの影響力を持っている様だった。


その娘であるクーネを横にシンは歩く。

出会ってまだ3日。洞窟を出発してからはまだ2日。

最悪の出会い方をした二人は、多少ギクシャクしながらも特に問題なく旅を続けていた。


しかし、そんな二人に思わぬ邪魔が入ったのは、出発から3日目の午後のことだった。



―子供の泣き声がする。


シンの聴覚が捉えた情報を基に街道わきの森の中へ向かう二人。


10分ほど歩くと、そこには森の中にも関わらず開けた場所があった。

人工的に作られたものなのか、自然に出来たものなのかはわからない。

背丈の短い草が生えるテニスコートほどの広さの広場。


そこにやって来たシンとクーネの目の前には、男たちが立っていた。

十数人ほど、薄汚れた革鎧を着て、全員が何らかの武器をその手に提げている。

殆どの武器には赤黒いシミが浮いている。血の跡だろう。


男たちは、突然音もなく現れたシンとクーネを見て一瞬驚きの表情を見せつつも、ニヤニヤとした下卑た笑みを隠そうとしない。

その中の一人が、シンの隣に立つクーネに声を掛けてきた。


「へっへっへ、そっちのフードはお嬢ちゃんかなぁ?おじちゃんたちに顔を見せてくれないかい?」


シンと違ってフードを被ったままのクーネの顔は見えないが、体形から女性とわかったのだろう。

その嫌らしく濁った目がクーネの身体を嘗め回すように見つめる。


「そんなひょろい男の傍にいないで、こっちに来いよ。楽しませてやるぜぇ、ケッケッケ」


別の男が腰を振りながら下品な笑い声をあげる。本人は実に楽し気だが、隣に立つクーネが顔を顰めるのがシンにはわかった。


「おいおい、おめえら、そんなんじゃ女の気は引けねえぞ。もっと男らしさをアピールしねえとなぁ、グハハハハ」


その後ろでは、集団の中でも一際大きい体格をした男が、斧状の武器を頭上に掲げて振り回す。

その筋肉は伊達ではないのだろう。斧がビュンビュンと空気を切り裂く音が聞こえた。



(人がいることは気配でわかっていたけど・・・、クーネ、こいつらは盗賊って言うことで間違いないよな?)


シンが念話でクーネに問いかける。


(この状況で盗賊以外のなんだっていうのよ。あんたにはあいつらが畑を耕している様にでも見えるわけ?)


(いや、念のための確認だ)


クーネの呆れたような返答に、男たちを見つめながら答えるシン。


当然ではあるが、シンは盗賊というものを見るのは初めてだった。

現代日本。そんな平和な世界で生きてきたシンは盗賊など物語の中でしか知らない。


絶対に前世ではお目にかかることがなかったタイプの人間を前に、ある種現実感を喪失したような状態になっているシンだった。


-----日本にも窃盗団とかはいたんだろうけどな。盗賊は流石に・・・いや、集団で万引きやカツアゲしたりする馬鹿共は盗賊と言ってもいいのか?どちらにしろ、ここまで下品な奴らが現代日本にいるとは思いたくないけど。


男たちを見つめながら、シンはそっと溜め息をつく。


(それにしても盗賊とばったり出会うとは、俺のセンサーもあまり役に立たないな。俺がちゃんと使えてないだけかもしれないが。・・・クーネ、今後はお前の感覚を使って警戒とかできないか?)


(警戒?何を警戒するのよ?)


心底不思議そうにクーネが念話を返してくる。


-----そうだった。クーネはドラゴン。最強の種族だ。自分を傷つけられる存在がほぼいないこの世界では、そもそも警戒なんてする必要性がないか。


生物としてはある意味欠陥ともいえる警戒心の薄さだが、ドラゴンにそれを言っても仕方ないと思い直すシン。


(でも、クーネだって今は力が制限されてるだろ。こういったトラブルはなるべく避けた方が旅がスムーズになると思うんだが?)


(んー、しょうがないわね。暫くは警戒してあげるわよ。シンも早く警戒能力を上げなさいよね!)


クーネの高飛車な物言いに多少イラッとしながらも、シンは改めて目の前の盗賊たちを見つめる。



異世界に来た時から覚悟はしていた。


ここは剣と魔法の世界だ。

文明の発展度合いも元の世界とは比べ物にならないほど低いことが予想された。

当然、倫理観も育ってなどいないだろうと。


-----貧すれば鈍するって言うけど、あれって結局は貧しさの中で教育なんて行っている余裕がない状況のことなんだろうな。その結果、人の心が育たないわけだ。


目の前の男たちを一人ひとり観察していく。

全員が全員、欲望に濁った目をしている。


「おいおい、女を殺しちまってお楽しみが無くなっちまったぁって思ってたところに、すっげーいいタイミングじゃねえか。俺たちゃついてるぜぇ、ウケケケケケ」


集団の一番端にいた男が嫌らしい笑い声をあげる。


-----女を殺した?


シンが目をやると、その男の足元には一人の女性が倒れていた。

うつぶせで倒れ、その周りには大きな血だまり。


男が斬ったのであろう。

その手に持った剣には真新しい血の跡が付いていた。


倒れている女性はピクリとも動かず、シンの分析眼でも鼓動の停止が確認できた。

そして、その隣にはもう一人、死んでいる女性に縋り付くように倒れている。


こちらは少女だ。おそらくは女性の娘だろう。倒れた女性の手を握りしめている。

幾つか傷を負っているようだったが、少女の方は息をしていることが確認できた。

気を失っている様だ。


-----盗賊に襲われたのか・・・。


人気のない街道を歩いている際に運悪く盗賊に出くわしたのだろう。


「ウケケケケ、仲間が5人もやられちまって、ガキ一人じゃ採算が取れねえって思ってたんだよな」


血の付いた剣を陽気に振り回しながら、男が言う。


仲間がやられた?シンは周りを見回す。

少し離れたところに男が数人倒れているのが見えた。全員死んでいる。

改めて倒れている女性を見ると、その横に短剣が落ちていることに気付いた。


-----死に物狂いで戦ったんだろうな・・・。


必死に娘を守ろうとしたのだろう。


男たちを見て、早くもこの世界の人間に絶望し始めていたシンだったが、倒れている女性からはどんな世界でも変わらない強い母の愛を感じることが出来た。

そしてそれと同時に、死んだ女性の思いと苦しみを想像し、胸が痛くなる。



倒れた女性を見つめるシンに気付いたのか、女性の傍に立っていた男が話しかけてくる。


「なんだぁ?兄ちゃんはこの女に興味津々かぁ?ざんねーんっ!死んでるんだなぁ。それでもいいなら、やるぜぇ。その女と交換でぇ、ウケケケケ」


しかし、シンはその言葉に一切の反応を返さない。

それが気に入らなかったのか、男は不満げな顔で睨み付けてくる。


「なんだぁ?いらねえのかよ?へっ・・・ったく、この女ぁ!油断したぜっ!!」


男はいきなり女性の身体を蹴り飛ばし始めた。

死んでいる女性は当然悲鳴など上げず、なすが儘にされている。


その光景を見て、シンが拳を強く握りしめる。


「止めろ!!!」


シンは蹴り続ける男に向かって叫ぶ。

意図はしていなかったが、その声は殺気の塊となって男を叩いた。


「ひょえっ!」


殺気に驚いた男が蹴りを空振りし、無様に尻餅をついた。


「グヘヘヘ、バーカ。何やってんだ、お前は」


「ガキの声にビビってんじゃねえぞ、情けねえ」


シンの殺気は蹴っていた男だけをピンポイントに直撃したのだろう。

それを理解していない周りにいた男たちは、尻餅をついた男を馬鹿にする。


「ち、ちげえよ。ビビってなんかいるか!・・・おい、テメエ!俺様に向かって止めろだとぅ!?なにふざけたこと抜かしてやがんだぁ!ぶっ殺すぞ!」


女性を蹴っていた男が剣を振りながらシンの方へと近づいて来た。

その後ろから他の男たちも一緒についてくる。


「シン、どうする?あたしが消し飛ばそうか?」


近づいてくる男たちを見ながらクーネが事もなげに言ってくる。


「いや・・・俺がやる」


シンはゆっくりとローブの中から剣を抜いた。


「おいおい、やるって、何をやるんだよ?グハハハ、この人数に勝てると思ってるのか?」


「消し飛ばすって、お嬢ちゃんは冗談が上手いんだねぇ?へっへっへ」


盗賊たちはシンとクーネの会話を真剣には取り合わない。

その油断で仲間を5人も失ったのだろうに、こいつらに学習能力は無いのだろうかとシンは呆れる。


「おい、あいつの剣、値打ちもんだぞ!下手に折ったりすんじゃねえぞ!!」


シンの剣の美しさに気付いたらしい男が声を上げる。


「男は殺せ、剣は奪え、女は犯せ。ウケケケケ、死ねやぁ!!」


先頭にいた男が、剣を両手に持ってシンの頭を目掛けて振り下ろす。

仲間を5人殺した女性を切り捨てた男だ。

それなりの手練れなのだろう、その剣のスピードは、前世のシンであったなら確実に切り伏せられていたものだった。


しかし、今のシンにとっては。


-----・・・スローモーションだな、まるで。


このゴーレムの身体の能力からすれば、男の剣は止まって見えるほどだった。

ゆっくりと振り下ろされる剣を避けつつ、右手に持った剣を振りぬく。


―ザシュッ!鈍い音を立てて男の剣が宙を舞う。


くるくると宙を舞った後、ズサッと地面に突き刺さる剣。

その柄には剣を握ったままの男の両腕が付いていた。


「う、腕ぇ・・・俺の腕がぁぁぁ!」


両腕の肘から先を失った男が、血が噴き出す腕を眺めながら呆然とする。


「テメエ!!」


そのすぐ後ろにいた大男が同じようにシンの頭を目掛けて斧を振り下ろしてくる。

男の腕は丸太のように太い。

普通の人間なら剣で防御したところで、剣ごと頭を叩き割られるだろう。


しかし、どんなに威力のある一撃であろうと、シンにとっては問題ではない。


-----だからさ、遅いんだよ!


ザンッ!シンの剣の一振りで、再び男の両腕と斧が宙を舞う。


「うぎゃゃぅああああ!!」


両腕を斬り飛ばされた大男は痛みに転げまわる。

シンが無様に泣き叫ぶ大男を見下ろしていると、右から剣を持った男が横薙ぎに切り付けてきた。


「くたばりやがれェ!」


同時に左には別の男が回り込んでおり、槍による突きが飛んでくる。


「うひゃひゃひゃ、もらったぁ!!」


偶然なのか連携なのか、普通なら絶対に避けられないタイミング。

二人の盗賊はシンの死を確信したに違いない。


しかし、それでもシンにとっては児戯に等しい攻撃だ。

ゆっくりと迫ってくる剣と槍を見つめる。


すると突然クーネが念話で話しかけてきた。

シンもクーネも超人的な反応速度持っている。

それに合わせて、戦闘中であろうと念話による会話も一瞬で行うことが出来た。


(シン・・・あたしがやろうか?)


別にクーネはシンが劣勢だと思っているわけではない。


シンにはクーネの言いたいことは分かっていた。その問いかけが何を意味しているか。


-----意外に気を使ってくれているんだな・・・。


クーネの心遣いに、素直に嬉しくなるシン。


(・・・大丈夫だ。覚悟は出来ている)


答えながら、シンは一気に真横に剣を振り抜いた。


ズシャッ!!肉と骨が砕ける鈍い音が鳴り響き、二人の男の胴体がゆっくりと宙に舞う。

シンがその顔を見ると、二人の男は同じような驚愕の表情を浮かべつつ、口をただパクパクと動かしている。


二つの胴体は空中で縦に何回転かした後、シンの左右の地面にドサリと落ちた。

それを待っていたかのように、残されていた二つの下半身が膝から崩れ落ちる。


「ぅうわあああああっ!ば、化け物ぉぉぉ!」


全く太刀筋が見えないスピードで仲間を真っ二つにしたシンを見て、残った男たちが恐慌状態に陥った。



-----圧倒的力量差だな。


足元に転がる二つの上半身を眺めつつシンは思う。


一瞬で4人を切り伏せた。

ゴーレムボディの能力を以ってすれば、殺さずに捕らえることすら可能だろう。

あるのかどうかわからないが、捕まえて警察のような機関に突き出せば、平和的解決になったかもしれない。


-----だが、この盗賊たちは女性を殺した。


そして、そのことに何の反省や後悔も抱くことなく、今度はシンとクーネを襲っている。

楽し気に、私利私欲を満たす為だけに。


-----こいつらの命に何の価値がある?こいつらは死んだって償えない罪を犯した。・・・罪を償えないんなら、せめて同じ目に遭わせてやるべきだろ?


前世で公言していたら、きっと問題視されていた発言だろう。

多くの先進国では死刑制度が廃止されていたくらいだ。

罪を憎んで人を憎まずという考え方も一般的だった。シンには理解しがたいものだったが。


-----お優しい考え方だよな。人が罪を犯すってのに。人ではなく罪を責めるなんて。罪さんもびっくりだ。


別に、シンは許すことを根幹に置いた考え方自体を嫌っていたわけではない。

しかし、犯罪者の更生という表面上は綺麗な言葉だけを叫んで、一方で被害者の人権を都合よく無視するような考え方には反吐が出る思いだった。


-----これが正義だ、善だ、なんて言うつもりは更々ないけどな。でも、人が生きていく上で社会を形成して、そしてそれを維持するための秩序を作るなら、自らの欲望のために他者を害する存在は・・・排除されるべきだろ?



シンは静かに宣言する。


「だから・・・お前たちは全員、殺す」


決して大きくも無いシンの声だったが、圧倒的プレッシャーを以って男たちの心を押し潰す。


「うぉぉわわわわわっっっ!!!!!」


目を血走らせた男たちがシンを取り囲むように一斉に飛び掛かってくる。

盗賊なりの本能で、目の前の男からは逃げられないと悟ったのだろう。

残った8人の男たちが怒号を上げつつ武器を振るう。


しかし、一閃。ただ、一閃。


シンが身体を一回転させながら剣を振りぬく。

シンの剣が元の位置に戻ってきた時、そこにあるのは8個の下半身。

その上では同じ数の上半身がクルクルと回転していた。やがて地面に落ち、土を赤く染める、


「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


一番最初に両腕を切り飛ばされた男、陽気に笑って女性を蹴飛ばしていた男が、その惨状を見て顔を引きつらせながら走って逃げていく。

シンは追いかけようと足に力を入れる。が、次の瞬間。


「・・・貫け(ペネトレイト)」


パンッ!!!乾いた音を立てて男の頭が弾け飛ぶ。

頭部を失った身体は、二、三歩歩いたかと思うと、そのまま地面の上に崩れ落ちた。


シンがそれを見ながら言う。


「クーネ・・・俺がやるって言ったろ?」


今、男を殺した魔術を放ったのはクーネだ。


「何よ、あいつが逃げ出す隙を作ったシンが悪いんでしょ。・・・それに私だって、あれを見て何も感じてないわけじゃないのよ?」


クーネの視線の先。そこには倒れている母娘がいた。

少女の方はまだ気を失ったままだ。


「そうだ、あの子の治療をしないと!クーネ、頼めるか?」


怪我をしないゴーレムの身体故なのか、シンは回復系の魔術を上手く使いこなせない。

ここはクーネに頼るしかなかった。


「ええ、分かったわ。シンはあっちをお願いね」


クーネが指し示す先。そこにはシンが2番目に切り伏せた斧使いの大男。

両腕を失いもがきつつ、巨体を揺らして地面を這うように逃げようとしている。


シンはゆっくりとその男に近付く。

近付いてくるシンに気付いた男は、木の幹にもたれるように立ちながら必死に懇願する。


「止めてくれぇっ。こ、殺さないでくれぇっ!」


「ん?お前は死にたくないということか?でも、あの女性は死んだぞ?お前たちが殺したあの女性は」


「お、俺は・・・あの女にはっ、手を出してねえぞ!」


「そうか・・・だから何だ?」


シンは冷たく言い放つ。


確かに女性に斧傷らしきものは見当たらない。

事実なのかもしれない。


だが、直接手を下したかどうかなど重要ではない。

目の前の男は、殺しを実行した集団に、殺す意思を持って所属していた。

シンの考えではその時点でアウトだ。


そもそも先程シンを殺そうと攻撃してきたのは間違いのない事実であった。

それで命乞いとは、あまりに自分だけに都合のいい態度だった。


男の態度に呆れながらも、シンはゆっくりと剣を振り上げる。

これから自身が死ぬという事実を男に見せつける様に。


「な、何なんだっ!お前は一体何なんだっ!!!」


男の必死の叫び。

せめて自分がどういう存在に殺されるのかを知って、死にたいのか。

しかし、その願いを叶えてやる義理はシンには無い。


「俺か?そうだな・・・、俺は神という無責任な超越者が気まぐれにこの世界に生み出した・・・観光旅行者だよ」


「ばっ・・・」


男が何かを言おうとした瞬間、シンの剣が高速で振りぬかれる。

男の頭が驚愕に彩られたまま地面へと転がった。


男が最期に何を言おうとしたのかはわからない。

きっとどうでもいいことだ。

あの男の命と同様、無価値な言葉だろう。


シンは剣の血糊を払うと、鞘に納め、クーネのいる方向へと歩き出した。


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