袋の中には
前話「年終わり、家族と」に出てきた袋の話です。
超短編です。1000字ないです。
お手軽に読んでいただけるように、お時間のある時にでもどうぞ。
「ねえ、タツキ。もうこれ開けていいかしら?」
年が明けた。新しい一年が始まる。
シンデレラは城のみんなから貰った袋を前に、タツキに尋ねた。
「そうだな、もう開けていいぞ」
タツキの言葉を聞いたシンデレラは、嬉々として袋に手を伸ばし、ひとつ目の紐をほどいた。
出てきたのは、小さな箱。
何だろう?
不思議に思いながら箱を開けると、中から一粒の綺麗な赤い石。
「綺麗・・・・・・」
「それは、たぶんレッドベリルだな」
「レッドベリル?」
「緑柱石っていう種類の宝石のひとつだ。色ごとに呼び方が違って、緑ならエメラルド、青ならアクアマリンって呼ばれてる。これは赤いから、たぶんレッドベリル」
「そうなの、こんな綺麗なものをいただけるなんて」
「城の近くに小さい鉱山があるんだ。そこで採ったものだろう」
鉱山。
シンデレラは興味を持った。
「行きたい!頑張って採掘するから連れていって!」
「ああ、行きたいなら好きなだけ連れていってやる。今はとにかく次の袋を開けたらどうだ?」
「え、ええ」
タツキに促され、次の袋に手を伸ばす。
出てきたのは、小瓶。
「何かしら、香水?」
「香水だな」
「素敵ね、誰からかしら」
「さあな、これには名前を書いてはいけないと決められてるからな」
「どうして?」
「あいつはこんなに良い物をくれたのに、俺はあんな物しかやれなかった、みたいに引け目を感じることのないようにだ」
「いろいろ決まりがあるのね」
シンデレラは勉強になる、と言った顔で頷く。
その後、二人は貰った袋を開封していった。
入っていたものの多くは高価な物、実用的な物だった。
タツキ曰く、もし何か困ったことがあったら、これをお金に換えられるようにという意味が込められているようだ。
その年に換金しなかった宝石や装飾品などは、次の人へ。
実用的なものは年終わりに使う。
これもこの国の決まりだ。
シンデレラは今年の年終わりが待ち遠しく感じた。
私は何を贈ろうか、そう考えながら新しい年の始まりを祝い、新しい家族との時間を楽しんでいた。
お読みいただきありがとうございます!
緑柱石はかるーく調べて載せましたので、間違いがあるかもです。
でも、この世界ではそうなんだ、の解釈お願いします笑
ちなみに、ベリル(別名ビクスバイト)の石言葉には、情熱、威厳、美麗、癒しなどがあるそうです。