ある冬の日
日が沈みかけ、空が黒く染まる頃。
シンデレラは今、ヴェルデシュタイン王国城の門の前にいた。
少しでも彼を感じたく、肩には愛する彼のコートを羽織っていた。
彼女はタツキとの新居が完成するまで
、客人として城に滞在している。
もちろん、タツキも一緒に。
「タツキ、まだかしら…」
「シンデレラ様、寒いのでお部屋に戻られては?」
衛兵が問いかける。
「いえ、大丈夫です」
タツキは四日前、ヴェルデシュタインで最東の地オズノルトへ視察に向かった。
『シンデレラ』
『なあに?』
『明日から四日間留守にする。オズノルトへ視察に行くんだ。』
『オズノルトって一番東の?』
『ああ、少し遠いんだ』
『…そうなの』
『寂しいか?』
『……大丈夫よ、お仕事頑張ってね』
『土産持って帰ってくるからな、待ってろ』
『うん』
とは言ったものの、
「タツキ…」
彼のいない四日間は、なんだか落ち着かなかった。
四日間くらい大丈夫だと思ってた。
やっぱり、あなたのいない日は寂しくて。
美味しいものを食べても、楽しいお話を聞いても、あなたがいなければそれらは何もかも"無"だった。
早く、あの人に会いたい。
そう思いながら、肩に彼のコートをかけなおし、門の外を見つめる。
しばらくすると、シンデレラは遠くに影を見た。
「タツキ…」
やっと帰ってきた、やっと。
シンデレラは門の外まで駆けていった。
「皆、ご苦労だった。ゆっくり休め」
「はい!」
「タツキ…!」
「シンデレラ、お前こんなに寒いのに何して…」
シンデレラは馬から下りたタツキの胸に飛び込んだ。
「…会いたかった」
「シンデレラ、」
「四日間だけなのに、寂しかった」
「…俺もだ。お前に会いたくてたまらなかったよ」
タツキはシンデレラを抱き締め返す。
同時に、シンデレラの体が冷えきってることに気づく。
一体いつからここにいたのか。
とりあえず、早く暖まらせないと。
「早く入るぞ。冷えきってる」
「うん!」
「土産に、新しいドレスを買ってきた。あそこは絹が名産なんだ」
「ありがとう!でも、今ある分だけで十分よ?」
「俺が着せたいんだ」
城に向かいながら、シンデレラの肩を抱く。
寂しかった、会いたかったと呟くシンデレラを愛しく思ったタツキは、彼女の髪にキスをした。
「…そういえば、なぜ俺のコートを着てるんだ?」
「…いいでしょ」
「はははっ」
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