第1-1話 トランティスの復興
まえがき
この物語の第1部の最初のころに「心と命、物質を繋ぐものはなんであるのか」と記したことを失念していました。病となったころ切実に思い悩み、答えがでないという確認までしましたが、それでも知りたいという望みは捨て切れません。
この物語の中で虚像であることは知っていても、そうだと盲信できるように答えを導き出したいと考えています。その根拠として、形状性質論を完成させることが必須だと信じています。結局は、何かに縋りたいだけかもしれませんが、その縋るものを自分で見つけ納得したいと思っています。
第1部に続きよろしくお願いします。
第1-1話 トランティスの復興
移転してから200年経過したラランド21185恒星系の惑星であるアトランの地下には多くのコロニーが建設されていた。ラランド21185は赤色矮星で、質量と半径は太陽の半分以下である。アトランに齎す自然光も太陽の約200分の1であり、地上で生命体が生存するためには過酷な条件である。
コロニーは、トランティス人の開発した自然光の発生装置により人工的に快適さを満たすように改造されていた。アトランは地球の80%くらいの質量しか持たないので、重力の調整も必要であった。食料も人造食により今のところ不平はでていなかった。
政体は、共和制となり一般的な生活はコロニー単位で自治が認められていた。国王のアラリは象徴的存在となり、評議長にはサンガがついていて、その補佐としてナザイギアとルーラが副評議長となっている。他の4つ惑星から5人ずつとアトランから10人の評議員が選出され総勢33人の評議員によってトランティス共和国の国政は運営されていたのである。
アトランにはトランティス共和国の中枢機構が存在し、巨大なコロニーが5つトンネルで結ばれていた。1つは行政府であり、1つは技術開発部、1つは実験施設、1つは教育センター、1つは住居であった。一般のコロニーにはトンネルはなく、独立した都市であったが、中枢では多くの情報が行き交うためトンネルが必要だったのである。実験施設は小規模なもので、巨大なエネルギーの実験場などは適時選出されることになっていた。特筆すべきことは、この国は軍事力をほとんど持っていない。兵器の技術開発は進められているが、その兵器を常備することはなかった。
地球とアトランには2日に1便の定期貨物船が航行していた。両国の取り決めで、首脳陣といえどもこの貨物船を利用しなければならなかった。貨物船には互いの国に足りないものを積載したり、研究や教育のための人員を載せたりしていた。もっとも、ほとんどの知識や技術はトランティス共和国から地球に供与されていたが、いくつかの知識は地球からも発信されていた。
治療を受けているセイトは、セイタンから3割くらいの精神の支配権を奪い返したようである。相変わらず、2重人格となった原因はわからないが、チロの対処療法は功を奏しているようで、セイタンもセイトの存在に気づき、2人の間では日夜論争が続いているようである。この2重人格は、2つの意識が同時に精神体に存在できるようなのである。国王をはじめとした元高官たちの回復は遅く、チロも苦慮しているようである。
地球ではトランティスが移転してから200年経過したことを受けて、元号を幼鳳とした。この記念行事として各コロニーなどの一般人から中央政府へ直接手紙を送れることになった。不平でも苦情でも悪口でも無礼講とし、民間人の声を聞こうという試みだったのである。
その中に一風変わった手紙が存在した。宛名は中央政府へではなく、桃九様へとなっている。差出人は地球の特例区である御堂神社の咲という女性であった。御堂神社は、桃九が生まれた藤部家が祀っていた神社であった。その手紙には、
「失礼とは存じましたが、是非とも桃九様にご覧になって頂きたいものがあります。桃九様はお忘れかも知れませんが、わたくしの先祖に優という巫女がおりました。その優が一度でいいから桃九様にお会いしたいと申しています。ただ、優は人の姿をしておりませんので、失礼を承知のお願いなのです」
「お、覚えているとも。見せたいもの?人の姿をしていない?かまわないから、咲さんを早速連れてきてくれないか?」