表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
76/78

第4-12話  次元と測定

第4-12話  次元と測定

 東雲は桃九から勧められた『次元と測定』という主張文を読み始めた。それには空者ガウスというサインがみとめられた。

 その主張文の書き出しは、

『未だ、次元は自然が作った数体系であるという観念から抜け出せずに主張するものであることをお断りしておきたい』であった。

 つまり、ガウスにとって強く主張できる内容ではないのかもしれないし、途中経過の主張という意味なのかもしれない。

 その中で、次元は2つに分類されるとある。1つは原点を1つだけ持つ真次元であり、この次元は他の真次元と一点において交わることができる。その交わる点によって真次元同士は関係ないしは演算というあらたな次元空間を生成する。1つは真次元から派生する子次元であり、それらの交わりは新次元の数体系のいずれの数にも存在する。つまり、真次元と子次元が生成する次元空間の演算方法は組み合わせの1種とみなすこともできる。

 その発想を発見することによって、かつて複素次元として考えていた次元は子次元ではあるが、a+biのような線形的な数体系ではないことがわかった。依って、複素次元を虚次元と呼ぶことにしたい。虚次元は真次元の全ての数から軸をのばすことにより次元空間を生成し、これを組み合わせとみなすこともできるのだが、その演算式が明らかでないところが、この主張文の弱いところである。

 このように考えると、正の実数も自然数を真次元とし、少数部を派生次元とした数体系とみなすことができる。依って、子次元は子次元から派生することも可能なのかもしれない。

 現在ではこのように完結しない主張文が主流となっている。主張は部分として扱われ、賛同する者や興味を持つ者がそれを繋いでいくことになる。ときには、実者が技術の改良のために興味を持つこともあり、主張文は個人の所有物とはいえなくなっている。

 『その次元に存在するものは、その次元を測定することができない』

 これは、高次に存在しなければ、低次元の測定ができないことを意味する。そして、真次元である1次元の直線上に存在するものが、直線上の距離を測定するとき、いかなる手法が考えられるだろうか?という命題でもある。

 ガウスの主張は、3つの存在が直線上にあり2つの存在が測定する2点に立ち1つの存在がその2点間を移動するとき、その1つの存在は移動した距離をいくつと現すのであろうか?存在が無限にあったとしてもその直線の数体系を知らない限り測定は不可能であるというものである。

 このガウスの主張によれば、この地球上で経験的に知っている次元は、3つの真次元だけである。相対時間を派生時間とみなしたとき、今まで測定できたとされていた値は擬似的、あるいは近似的なものになる。極論をいえば測定値は意味を持たず、全ては感覚の測定となってしまう。

 ガウスがこの世界が幻影であるかもしれないという根拠はここにもあった。論を重ねれば破綻が近づき、全てが幻影と化していく。論もこの世界の相対性から逃れることはできない。

 全てが相対的であるということが、この世界の真理に最も近いと考えるガウスは、その相対性が崩れたとき、真の理が姿を現すことになると思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ