第4-8話 テーマを求めて
第4-8話 テーマを求めて
チロが人類に与えた知識は、それほど多くない。
・ この世界は神の子が、無の領域に投じた源根子から空間線が生成され、+-の極を持ってできたこと。
・ 極は全ての極に対して空間線を2次的に生成させたこと。
・ 数十の桃の精もこの世界に投じられたこと。
・ 全ての桃の精は2回の精神分割を行い、最古の世代は第3世代であること。
・ この世界の空間は空間線により構成されていること。依って、空間は格子であること。
・ 物質界は、空間線またはその極の配置パターンにより構成されていること。
・ 空間線で構成される上流界は物質界以外にもいくつかの世界を構成したこと。
・ 物質界に棲むことを選択した桃の精は13×4(分割後)=52であること。
そのほかに、人類が空間線(極)で構成される物質の素であるサブユニットを発見したとき、いくらかの助力をしているが、チロは人類に己で知識を得ていくことを望んでいる。そのため、チロと同世代のセイトと現在は隠居状態にある。
東雲は子らのことが心配でちょくちょく桃九低を訪れる機会が多くなっていた。
「その後、ショウはどうしてますか?」
「何かを探しているようだが」
「見つかるでしょうか?」
「いつかはな」
「ユキは咲のところに入り浸りだ。マモルはわたしにもよくわからないところがある」
「ユキは母様のことで」
「それもあるだろうが、巫女の役割が気に入っているようだ」
「マモルはおとなし過ぎませんか?」
「そうかもしれないが、妙な感じはしない。あれはあれで何かを探しているのだろう」
「ところで、わが地球もいくつかのテーマを持ったならばどうかと思うのですが」
「テーマか……。わたしはまだ早いと思う。なにしろトランティストとは20万年の差があるのだ。アンドロメダとは60万年だ。基礎となる土台が違いすぎる。今は人材の育成を東雲さんに頼みたい」
「それはもちろんですが、先ごろの人は生に対する執着が少ないように感じます」
「それはいいことではないのか?」
「わたしたちが若いころは、不老不死など夢のまた夢でしたから、生への執着は戒められました。しかし、不老不死に手が届くかもしれないのに望む者は多くありません。しかも望む者もどこまで本気で望んでいるのかわかりません」
「不老不死など欲の1つに過ぎなかったということか。わたしが若いころなど不老不死より痛くない肉体を望んだものだ。あ、例えばだ。例えばな」
(このお方はどんな境遇を歩まれてきたのだろう)
「桃九さんは、この地球がどうなればいいと思ってますか?それは天の川銀河や物質界についてもお聞きしたいと思います」
「それがわからないから生きているようなものだ」




