第4-6話 ショウの苦悩
第4-6話 ショウの苦悩
自分の部屋に戻ったショウは、何故あそこから飛び出したのかと考えていた。何かが悔しいわけではない。悲しいわけでも寂しいわけでもない。ただ他の人と違うということに僅かな罪を感じるのであった。
東雲は桃九に経緯を説明した。
「すまぬ。わしの配慮不足であった。桃九さんの一言にショックを受けたのは事実であった。それをなんとかしようと些かあせっていたのかも知れぬ」
「わたしの一言?」
「わしにも桃九さんの感覚はわからぬと……」
「ああ、しかしそれは仕方のないことです」
「そうなんですが、それをどうにかしたいと……。ショウ君たちのこともありましたし……。しかし、わたしが愚かでした」
「愚かということはありません。何かを為そうと思えば、何かの結果は出るものです。これが自然の理であることは東雲さんの方がよく知っていると思いますが……」
「確かに。わしは些か動揺しておるようじゃ。そこで、ショウ君のことをお願いしたいのですが……」
「わかりました。少しは父としての役割を果たさないと……」
桃九はショウの部屋を訪れた。ショウは何事もなかったように桃九を部屋に招き入れ、
「珍しいな。父様が僕の部屋を訪ねるなんて……」
「そうなんだよな。何事もなかったように感じるし、そうも思いたい。しかし、それが溜まっていく」
このとき、ショウに罪の意識めいたものが蘇った。
「父様、どうして僕は人と違うのでしょうか」
「違って困ったことはあるか」
「……いえ、そんなには……」
「ではよいではないか。人と違うことを罪に思う必要はない」
「え?何故わかるのですか」
「ん?ああ、わたしと似ているからそうかと思ってな……」
「父様も寂しいとか悲しいとか感じたことはないのですか」
「そうだな」
「母様が死んだときも?」
「ああ、あれが悲しいという感情だったのか。今まで気付かなかった」
「では悲しいと感じたのですね」
「そうだな。もしかすると感情が鈍いだけかもしれない」
「僕はどうすればいいの?」
「どうすればとは?」
「人と違ったまま生きていっていいの?」
「もちろんだ。こう考えればいい。自分と違うのは他の人だと。ただ、それはショウが正しいということを意味しない。ショウは他の人と大きく違う道を歩まねばならないという意味だ。誰と違っても違わなくとも先のことは誰にもわからない」




