第4-4話 子らの感覚
第4-4話 子らの感覚
「じい、じい」
「おお、おお。子らが揃ってどうしたのじゃ」
「感性って何なの?」
「いきなり難しい問いじゃのう。そうじゃな、感じるということじゃ。皆も悲しいとか寂しいとか嬉しいとか感じるじゃろ。それを昇華させていった感覚のことじゃ」
「昇華ってなあに?」
「僕は悲しいとか寂しいとかどういう感じなのかよくわからない」
そういうのはショウであった。
(なに!桃九さんも若いころアレキシサイミヤとかアスペルガー症候群の疑いがあるため専門医の診断を受けるように勧められたそうじゃ。これらのものも遺伝するのか?それとも父親という環境のせいなのか?いずれにしてもショウはアレキシサイミヤの部分を受け継いでいるのかもしれない)
「ショウは嬉しいとかは感じるのか?」
「嬉しいとか感じるけど、それは周りの人と違うときみたいだよ」
(一度、桃九さんに相談すべきかもしれない。それとも桃九さんはすでに気がついているのか)
「マモルはどうじゃ」
「鈍いって感じかな。感じるけど周りの人より遅いみたいだよ。遅くて”ど~ん”って感じで悲しくなったりするときがあるよ。それが嫌だから多くの人と話すのは苦手だな~」
(これはどういうことだ。感覚が異常に敏感なのかもしれない。しかし、その感情が襲ってくるのが遅くて幸いだった。皆と同じ速度で感じていたら気が狂っていたかもしれない)
「ユキはどうじゃ」
「わたしは父様を大好きだけど、母様にも会いたい。母様に会いたくて寂しくなるときがあるわ」
「……それは叶わぬことじゃ」
(ユキは正常といえるのか?そもそも、マモルもショウも異常とは限らないが。桃九さんもそうじゃったようだからの)
その足で東雲は桃九を訪れた。
「子らのことで何か気がついていることはありますか?」
「ん?紋章のことですか?」
「いえ」
「では感覚のことですか?」
「やはり気付いていましたか」
「ああ、あれは個性だ。わたしもそうだったからわかる部分が多い。但し、これからの人生が辛いものになる可能性は高い」
「確かに。皆と大きく違うということは生き辛いものでしょうから」
「その失われたものを補うものが必要になってくる。そうでなければ失われたものを昇華させるのだ」
「そんなことが可能なのですか?」
「わからない。少なくともわたしはできなかった。わたしは自分の世界に逃げただけだ」
「それは違うと思います。桃九さんは他の人のことをよく思っておられます」
「そういう意味ではないのだが、東雲さんにもこの感覚はわからないかもしれない」




