第3-17話 優の帰還
第3-17話 優の帰還
「タイミングの問題は解決できない」
「では、このままあの紋章の修復にとりかかるのか?」
「いや、それはできない。わかっていないことが多過ぎる。あの負の値だけをとる波も重力なのか明らかではない。それは正の値だけをとる波が斥力なのか怪しいということも意味する」
「わたしの仮説は正しくなかったのか」
「いや、それはわからない。ただ証明はできなかった」
「波がエネルギーの特殊体なのは間違いないと思うが、空間との連続性はどう関係しているのだろうか?」
「波は空間に連続性について依存してしないと思う。今回もそうだが、例えば矩形波など連続しているとはいえない。この物質界に現出する周期が測定できるから、数学的には連続していると考えることができるだけだ。そもそも空間線が連続体ではないのだから何をもって連続性を考えるのだ」
「波相についてはどうだ?エネルギー体は相を変えるのだろうか?変えるとしたらいくつの相を持っているのだろうか?」
「わからないことの次は考えない。波相はエネルギー体の相の1つだと思うが、他はわからない」
「セガルの中に波専門の部署を作ろう」
「そうやって、わからないことを他に押し付けるのか?」
「違うしそうでもある。わたしは次元を追及したいのだ」
「わかった。波についての議論は止めよう。優を帰還させる方法があるかもしれないからな」
「紋章が修復できないのに帰還できるのか?」
「試してみないとわからない。正規の門からではなく、裏門から帰還するようなことになるがな」
「そうか。この模擬装置から脱出させようというのか」
「そうだ。優、この模擬装置のD点に跳べるか?」
「はい」
そう言った瞬間、優は桃九の眼前に現れた。
「桃九様……」
「変わっていない……」
結果として、重力と斥力の問題は明らかとならなかったが、優の救出は成功したように見えた。しかし、あの紋章は残ったままだった。




