第3-16話 内在する点
第3-16話 内在する点
「D点が内在する点であることが問題だと思う」
「どういうことだ」
「形状性質論によれば内在する点と外在する点の性質は異なる。外在する点は外周の一部となるから実際には外在する点は存在しないが。こうは考えられないか。内在する点は一定の条件が揃えば外周への反発で斥力を持つ。その一定の条件が紋章の正体なのではないか」
「なるほど。ではどうすればよい」
「D点に向かう線分の角度は全て60度だ。それを-60度にできないか」
「そうか。内在する点を外在するようにみせかけるのか。やってみよう」
60度の角度を-60にみせかけることは位相を使えば理論上は可能であった。全ての実験は擬似紋章機で行っているが、問題はその手法となった。外周の各点から同時に位相波エネルギーを送り込んだ。ところが、紋章の機能そのものの働きが失われた。
「外周の螺旋波に影響を与えたのだ。D点に位相波エネルギーを送り込んでみよう」
しかし、D点には6本の線分が集っている。この6本に均一な位相波エネルギーが伝わるとは考えにくかった。そして、均一に伝わっていないようであった。
「失敗か」
このとき、観測者が、
「一瞬ですが、周期的に波の値が負だけになります」
「おっ、周期性を詳しく分析しろ」
「周期性は、60度の倍数のときです」
「すると、位相波エネルギーを送り込む周期速度を早くすれば、負の成分である時間が増えるということか」
「いや、それは思い違いだ。負の成分でない時間も増える」
「あ、そうか。ではどうすればよい」
「今はどうしようもない。60度の倍数の周期タイミングを精密に測定することだけが、次に繋がる」
「次とは?」
「D点に物質をおいて転送させるのだ」
「そうか。それが目的だった。しかし、D点に物質をおいても正常に機能するのか?」
「角度に影響を与えなければ大丈夫なはずだ。アンドロメダのときは成功した。そして、今はアンドロメダのときよりわかっていることが多い」
しかし、D点においた物質に変化は起こらなかった。
「そうか。行き先が設定できていない。この装置は行き先を意思で決定しているのだ」
「わたしが行ってきましょうか?」
そう言うのは、アンドロメダのときの最初の実験に志願したものだった。
「行ってくれるか」
…………
「アンドロメダまで行ってきました」
その人物は何事もなかったように装置から抜け出てきた。
「成功だ」
「いや、タイミングの問題がまだ残っている」




