第3-14話 個と関係の第2原理
第3-14話 個と関係の第2原理
「例えば、1つの存在の両極に同じ引力と斥力を与えた場合を考える。すると、引力は両極を引き合い、存在を1/2に縮めたとき、斥力は存在を2倍に広げると考えられる。さらに、縮めるときは大きな抵抗を受け、広げるときは小さな抵抗を受けるものと感じる。つまり、同じ力の量で符号が逆の力が同じ存在に作用するとき、2倍と1/2の働きが結果として現れる。原初の空間線はこの性質を使って、次元を作ったのではなかろうか?」
「なるほど。『個と関係の原理』の第2原理になるかもしれない。わたしは創発現象という問題を考えているが、この2つの原理からでも個あるいは部分の集りが全体とならないことがわかる。部分を集めて全体を構成するとき、個ではなく個同士の関係に着目しなければならないということがよくわかる」
「創発現象はわたしの専門外だが、この世界の構築にその創発現象が関係しているのは明らかだと思う。空間線同士が干渉しあい脈という波を発生させる。脈は何らかの原因で空間線から離れて別のエネルギー体になると考えられる。脈を失っても空間線はその性質から常に飽和エネルギー状態を保つ。離れた脈が空間線に作用することは考えにくいから、+の脈のエネルギー体はその斥力によって次元を広げる役割を果たすのではないだろうか?-のの脈のエネルギー体は、+の脈を相殺し、広がった次元を1/2に縮める。このようにして純粋な+の脈即ち斥力は消滅するはずだ。しかし、広げた次元の広さは減ることはあっても消滅することはない。全ては推測に過ぎないか遠い未来に空間線を観測できる技術が開発されたとき、多くのことがわかるだろう」
「観測とは感覚ではないのか?」
「そうだが、未来の感覚は今のままではないはずだ。それに矛盾という言葉を使うことを厳禁にしよう。矛盾とは論理の産物だ。論理は、条件とか前提のもとに絶対性を作る。矛盾はその条件下での論理の一部に過ぎない。この世界に無条件の絶対性を作ることは、今のところ不可能だ。論理を構成する条件が崩れれば、自ずと矛盾も崩れることになる。論理に過信を持ってはいけないのだ」
「お前、東雲さんと話したことがあるのか?」
「いや」
「では今度会ってみるといい。東雲さんは論理と感性の融合を担っている」
「それは面白そうだが、今はそのときではない」
「確かに。今は優の救出が先決だ。ところで、どうやって重力を作り出すのだ」
「その前に空間は広がっていると思うか?」
「いや、神の子が投じている空間線の分は増えているはずだが、この世界が自ら空間を広げることはできないはずだ」
「認識が一致した。広がっているのは次元という2次空間だ。依って、重力が2次空間に及ぼす作用から考えていけばよい」
「さっき、先走った話だな」
「そうかもしれないが、わたしはこう考えたい。重力が負の力であることと、距離の2乗に反比例することから複素次元が重力を生み出していると。というかその次元しかアイディアが浮かばないのだ」




