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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第3-13話 力の投影

第3-13話 力の投影

「ようやく。わたしの仮説を試すことができるようだ」

「どういうことだ」

「物質は力の投影であるという仮説だ」

「なにっ、わたしも同じことを考えていたが、仮説すら立てられなかった。しかし、この世界を物質を主体として考えるときと、力を主体として考えるときでは様相が異なることは、『個と関係の原理』からも明らかだ」

「重力波とは何か?ということを考えても概念もイメージも掴めなかった。そこで重力の作用を考えてみた。重力は質量を持つ2つの物体間に働くとされている。つまり、2つの物体を引き合うということだ。重力は質量に比例し2つの物体間の距離の2乗に反比例するし、電荷などに見られる電磁力よりはるかに弱い力だ。そして、空間線の性質を受け継いでいるならば、重力は負の力であるはずである。しかし、全ての空間線の重みは1単位重みであるから、距離は引力に影響を及ぼさない。距離を生み出したのは次元なのだ。わたしたちは、座標の概念を得てから負の距離を当たり前のように扱ってきた。つまり、負の距離とは方向の異なる正値の距離として認識している。方向即ち角度は複素次元の産物であるから、重力は複素次元と密接な関係がある」

「ま、待て。先走るな。物質が力の投影だということは、わたしたちは幻影の中に棲んでいるのか」

「いや、それは違う。違うがそうでもある。例えば、わたしたちは自分の存在を感覚で確かめている。つまり、感覚が認めたものは実在するものと同じになる。人類のほとんどが同じ感覚を持っていれば、幻影も実在も同じものなのだ。一部の人だけの感覚を幻影という。わたしたち精神体も巨大な重力であれば、大きな圧力を感じる。つまり、感覚の本質が肉体にあるのか精神にあるのかわかっていない。そして、観測とは感覚の延長であるから、いくら優秀な装置を開発しても人の感覚が見たいと思わなければ、観測は不可能なのだ」

「う~む、確かに。では事実も感覚の産物ということになるな」

「答えにならないかもしれないが、太古より科学に類するものの根拠は、全て経験則に依っている。その経験則から自分たちの棲む世界の原理を発見してきた。これは、仕方がないというより定めなのだ。この定めを破ることが、人類に可能なのかはわからない。しかし、これだけはいえる。原理を発見した人は相当数存在するが、真理を発見した人は一人もいない。というより真理を発見しても確かめる術がない」

「言い換えるとこういうことか?わたしたちは全体の一部分である。その全体が属する全体が存在するかもしれないが、わたしたちは感覚という認識に囚われている限り、自分の属する全体すら見ることができない」

「そうではあるが、わたしたちは感覚を捨てるわけにはいかない。推測になるが、感覚を捨てた瞬間に時間の共有が失われると思う。わたしたちは感覚という結びでこうして会話ができているのだ」

「すると、感覚を持ちながら真理を探さなければならないのか?」

「おそらくな」

「それは矛盾ではないのか?」

「いや、それは試練なのだと思う」


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