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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第3-12話 重力と斥力

第3-12話 重力と斥力

「今までの話をまとめてみると、極座標系を用いるのが適当かもしれないな」

「わたしもそれを考えていた。すると、前提がいくつか必要ではなくなる」

「では、螺旋の式を暫定的に決定しようか」

 こうして、辺を走る螺旋の座標を表す式が決定された。

 x=A・COSθ

 y=A・SINθ

 z=B・θ

 AとBは正の実数であり、θは複素次元により決定される。AとBの値は観測値から求めることとして螺旋波の解析は一応の目途がたった。

 しかし、観測室から新たな問題が提起された。

「D点に向かって走る線分の観測値は全て正の値をしめします」

「螺旋波ではないのか?」

「はい。値がゼロの地点で正方向に折り返すようなのです」

「螺旋波でないことは少しは予測していたが、正の値だけをとる波形だったのか」

「どういうことだ」

「おそらく、エネルギーの質が違うのだろう」

「正負の値をとる波と正の値だけをとる波か」

「いっそ、正と負だけなら重力と斥力というアイディアもうまれるのだが……」

「今、何と言った?」

「だから。重力と……」

「それかもしれない」

「どういうことだ」

「脈の基本だ。だから、物質界には純粋な斥力は存在しないと思っていた」

 脈の基本は、両端に+-の極を持つ空間線を最小単位として、この世界に全ての極を繋ぐ空間線を派生させた状態を始まりとする。+-の極は同数が存在し、両端に同符号を持つ空間線は+(斥力)、異符号を持つ空間線は-(引力)を持つ。しかし、+-同数の極からは必ず-の空間線が多く生成される。これを『個と関係の原理』といい、物質界でもこの原理は破られていない。そのため斥力は引力により相殺されて引力だけが残ることになる。尚、空間線そのものが消滅するのではないことを断っておきたい。

「あのアークは、斥力かもしれない。但し、純粋な斥力ではないと思う。純粋であるはずはないのだ」

「ま、待て。お前は重力と斥力のことを何か知っているのか?」

「いや、知らない。ただ、脈の基本と数学的にこうでなければならないと結論付けているだけだ」

「確かに納得できる部分が多くある。しかし、これは先に進んでいると言えるのか?」

「先に進んでいるのかわからないが、変化はしている。だから、次のやるべきことが見つかる」

「何をするのだ」

「重力を作る。値が負だけの波を作るのだ。そして、重力のアークをD点に集める」

「そうか、それが紋章の完全体か」

「いや、試してみなければわからない」

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