第3-9話 アークの謎
第3-9話 アークの謎
「まず、あの紋章の辺を走る脈の次元はいくつだ?」
「4だが、必ず直進するから3と考えていいだろう」
「異なる回転角はいくつ存在するのだ」
「それを知ることは難しい。今は、螺旋波となる脈の集合体1つと考えたほうがいい。螺旋波とならない辺もいずれ繰り返しによりもとに戻るから、深く考える必要はない。あの紋章は脈の鼓動を延々と繰り返しているのだ」
「では、反射による脈の合成波はどうなる?」
「回転角と同じことだ」
「すると脈の成分分析は難しいということか?」
「現段階ではそうだな」
「それだとアークの解明ができない」
「いや、それでも1つの仮説をたてることができる」
「おぉ、聞こうではないか」
「螺旋波は反射しても直ぐには、形状を逆向きに変えることができないと思う。しかし、いつかは螺旋の向きを変えるはずだ。このとき、瞬間的に定常波になると考えられる。そして、定常波は複素次元を3つの次元から切り離す。定常波は複素次元を必要としないというのが理由だが、これは確認する必要がある」
「わからないことが2つある。1つは次元を切り離すということはどういうことだ」
「複素次元は、3つの次元のそれぞれと複合次元を構成している。だから負の実数が存在するように見えるのだが、複素次元が物質世界で意味を持つのは、動く存在にだけだ。定常波は動かないように見える。だから複素次元は物質世界に影響を及ぼすことができないため、次元を切り離すという表現を使ったのだ。実際を知る術はない」
「なるほど、しかし波は動いているぞ」
「動いているのは波だけだ。移動もしないし、成分も変わらないから波だけに複素次元は影響を及ぼす」
「わかった。もう1つだが、何故螺旋波は直ぐに向きを変えないのだ」
「残波の影響だ。そもそも波は与えられた初期エネルギーによる振動の結果だ。しかし、初期エネルギーを同時に均一に与えることは不可能だ。依って、主となる大きな波つまり主波だが、その後を追うように残波が走ることになる。この残波が反射波より小さければさほど影響はないが、螺旋波の場合、残波も大きいから方向転換を妨げることになる」
「つまり、こいうことだな。螺旋波が瞬間的に定常波となったとき、孤立した複素次元は波の負の波形をアークとしてどこかに遷移させる」
「大体そうだ。付け加えるなら定常波と複素次元は瞬間的に不連続体を形成する。しかし、わからないことがある。不連続体であるからアークはどこに遷移してもよさそうなのだが、何故か頂点にばかり集るようだ」
この頂点にアークが集る理由がわからなければ紋章の完全体ができないことに、やがて気がつくことになる。




