第3-7話 複素次元
第3-7話 複素次元
「ところで、複素次元は何処に絡んでいるのだ?」
「負数の全てにだ。例えば、正弦波は0~πのとき正数、π~2πのとき負数をとる。以前に前提として2つのことを話した。1つは物質世界に負の数は存在しなく、負の数は複素次元がもたらす。1つは、この世界は2乗に支配されている。と考えると、正弦波y=A・sin(θ)が負の値をとらないために式を変更するとどうなる?」
「y=A・sin(θ)+A、つまり y=A・(1+sin(θ))だ」
「その+Aの意味は何だ?」
「う!」
「+Aは、進行方向の軸から正弦波が離れることを意味する」
「そうか」
「では、離れた部分は何で構成されている?」
「う?」
「無だと思う。無の分だけ+A離れる。矛盾だと思わないか?」
「確かに。無は無である」
「想像できることは、+AのAの値に意味はなく、離れた部分はこの世界に不連続体をもたらすことだ」
「それが、切り取られたアークの正体か」
「先走るな。矛盾だと言ったろ」
「あ!」
「この世界は3つの次元で構成されていると強く主張されているが、例えば2つの次元で構成される世界を考えるとき、2つの次元の関係を知ることが重要だ」
「関係?」
「例えば、2つの次元がそれぞれ実数で表現できるとき、2次元の座標は(x,y)となる」
(なるほど)
「ところが、2つの次元が直交しているのかを知る術はない。局所的な自然現象を考えるときは近似的に直交すると仮定してもさほど問題は起こらないが、この世界全体を考えるとき大きな問題となるだろう。さらに、それぞれの原点同士で交差しているのかもわからない。1つ次元は5の位置で1つ次元は7の位置で交差しているのかもしれない。このことは、この世界に負数は存在しないと考えたとき、大きな問題になる」
(う~む。暫く出番はなさそうだ。しかし、早く複素次元のことが知りたいものだ)
「複素次元は、この世界の3つの次元に角度として影響を与える。複素次元は原点も座標も持たず、この世界の全てに影響を与える局所的あるいは相対的次元となる。3次元は負数を持たないから座標(位置)も減ることができない。つまり、移動は常に正の方向に増えるだけである。位置を戻すためには複素次元の関与が必要となる。つまり、移動の方向(角度)は複素次元に支配されることになる」
「う~む。素朴な疑問だがこの世界の3次元におけるゼロとは何を意味するのだ?」
「境界である。ゼロの位置には越えられない壁が存在するとイメージすればよい。超えた先が虚無なのか別世界なのかを知る術はない。全ての存在はゼロの壁にぶつかると反射する。ところが、ゼロの位置が何処なのかを突き止めるのは容易ではないだろう。反射するから、ゼロの位置に到達してもそうだと気がつかない。ゼロの位置の捜索にはそれ相応の準備が必要となる」




