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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第3-1話 地球へ

第3-1話 地球へ

 ルガは救出された後、トランティスの精神の暖床に横たわっていた。長きにわたる監禁で疲れ果てた精神にこの暖床は心地がよかった。とはいえ、チロへの不信感は消え去るものではなかった。しかし、数日の安らぎはルガの精神状態を安定化させていった。セイトが、アンドロメダから戻り、ルガの様態を窺いに暖床を訪れた。

「気分はどうかな。チロのことだが、許してやってくれとは言えない。わたしも同じだったが、当時のチロは神の世界に帰ることだけが望みだったのだ。だからといって、君を含めた人類を不当に扱っていいという理由にならないことはわかったつもりだ。今回のアンドロメダの件で思い知らされたような気持ちだよ。わたしたち桃の精の第3世代はこの物質界に52存在しているはずだ。その中で存在が確認されているのはわたしとチロだけだ。4つの精神体は末端まで精神分割を行ったと思われる。1つの精神体は第5世代としてサンガとゴクウを残したが、1つは精神分割を行い、1つは行方知れずだ。わたしの妹が行方知れずなのだ。ということは、わたしたちの知る桃の精の半分以上が、人類に宿ったか宿る可能性を持っている。つまり、この物質界はすでにわたしとチロだけのものではないことに気付かされたのだよ。わたしとチロは、物質界の運営に直接関わることを控えることにした。人類が、必要だと思うときには相談にものるし助力もするが、わたしたちは人類にわたしたちの望みを託すことを約束する」

「わたしは、これからどうすればいいのでしょうか?」

「それは君が決めればいい。何処かに旅立つことも構わないが、それでもこの天の川は君の故郷だ。いつ戻ってきても構わないし、困ったことがあればいくらでも援助するよ。もちろん、ここに残ってもいい」

「少し考えさせてください」

「そうだね。ゆっくりと考えればいい。1つ頼みがあるのだが、聞いてもらえるかい?2つになるかもしれないが……」

「どういうことでしょうか?」

「1つ目は、君の残した一族に一度会ってから、旅立つか残るか決めて欲しいのだ。彼らは、君を先祖神と崇めて、待ち焦がれている」

「え?セガルの一族がまだ生き延びていたのですか?もしかしたら、わたしの子孫も残っているかもしれません」

「子孫?」

「はい。わたしは一度妻帯し、子供を3人残しています。で、彼らは何処に?」

「地球にいるよ。地球のトップの桃九くんに庇護されている」

「会いたい……」

「是非、そうしてくれないか」

「しかし、チロ様が許してくれるでしょうか?」

「まだ、わだかまりがあるようだね。チロは今後一切君に干渉しない。地球に行ったら、桃九くんを訪ねればいい。彼は感介者でもある。ただ、これはお願いになるのだが、一度だけチロの謝罪を受けてくれないか?」

「謝罪?」

「そうだよ。それにチロがきみにあげたいものがあるそうだ」

「わかりました。もう少し落ち着いたら地球に行ってみます。で、もう1つは?」

「実は……。君が地球にいるころ紋章をいくつか作った記憶はあるかな?」

「紋章?あぁ、デュメのことですね。図象性質論の試作品でした」

「その紋章の1つに閉じ込められている娘が一人いる。この娘を助け出して欲しいのだ」

「まさか」

「いや、真実だよ」

「もしかして、その図像は正三角形の集合図ではありませんか?」

「そうだ」

「あれが機能したというのか」


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