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脈流(RW1)  作者: 智路
第2部 幼鳳のさえずり
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第2-19話 価値観

第2-19話 価値観

 翌日、セイトたちは帰還の準備をしていた。ゴクウとの会話の結論は、われわれは主導的に内政干渉をしないというところに収まっていた。見方によってはアンドロメダの人たちを見捨てることに繋がるようであるが、社会というものはこういう危機を乗り越えて成熟していくものだというセイトの経験からくる説得にゴクウは納得したのであった。

 そのとき、セイトらのいる場所に数人の集団が向かっていた。その中の一人が、

「いくつかのお願いがあって参りました」

「どのようなことで?」

「われわれに援助をお願いしたいのです」

「いえ、われらはここへの内政干渉はしないと決めたので……」

「昨日から今朝までいろんな議論がされました。その結果、2つのことをお願いしたいのです。1つは法律の制定です。法律はやってはいけいことを数ヶ条だけ決めました。人民が多過ぎて細かいことを決めようとすると、何も決まらなくなります。そこで、司法の場の立会人をお願いしたいのです。司法行為を武力で阻止しようとする勢力が現れないとも限りません。武力による問題の解決だけは避けたいのです」

「なるほど、われらはそこにいるだけでいいのですね?」

「はい。もう1つは軍部の監視と抑制です。軍部はセイメイが一手に握っていました。いまだセイメイに忠誠を誓うものがいるかもしれません」

「なるほど、やはりそこにいるだけでいいのですね?」

「はい。われらは、少しずつ法の整備や軍部の解体を進めたいと思っています。できるだけ民意が反映されるような国家にしたいのです」

「そのことについて、わたしたちは何も意見できません。アンドロメダにはアンドロメダの価値観があると思います。アンドロメダとわれらの社会は異なるのです。アンドロメダが再び独裁制国家となっても、 わたしたちは何も言えないのです」

「わかっているつもりです。それでも、われらの体制整備が軌道にのるまではここにいて欲しいのです」

 セイトはゴクウを隊長として何人かを アンドロメダに残すことにした。

「ゴクウ、なにがあっても介入してはいけない。例えゴクウ自身が正しいと思ってもだ。その正しいと思うことを正しいと判断できるものは主体しかいないのだ。ここの主体はアンドロメダの人たちなのだ」

 そう釘をさしたセイトは天の川銀河に帰還し、チロと面談した。

「無事でよかったわ」

「ルガの救出だけのつもりだったが、思わぬことになってしまった」

「ところで、ゴクウの精神鞭はわたしたちも拘束できるの?」

「もちろんだ。これからも、チロやわたしを抑制できるものを増やしていきたい。今回の教訓かな?一部のものだけに力が集中してはいけないのだ。そして、価値観を共有する必要はないが、上に立つもの同士は互いに信頼感を持たなければならない。そう思うよ」

「そうね。わたしも地球では独裁的だったと反省しているわ。これからは桃九をもっと自由にしてあげないといけないわね。わたしの望みは桃九のものじゃないもの」

「そうだね。ところでゴクウだが、あの精神鞭を如意鞭と名付けて鍛錬に励んでいるようだよ」


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